球体とリズムBACK NUMBER
シメオネが本当の「神」になるのか。
CL、残り3つの対戦を予想すると……。
posted2016/04/21 10:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
AFLO
「真の4強になるんですかね? 意外とアトレチコが抜けたりして」
僕が前に書いた記事を読んで、香港で一緒にサッカーをしていた広島出身の攻撃的サイドバックが久しぶりにメールをくれた。映画会社で働くその友人が、得意のピンポイントクロスと同じくらい鋭い洞察力を備えていることを思い出した。
そして本当にバルセロナは姿を消し、今季もチャンピオンズリーグの連覇チームは生まれないことに。またスーパーリッチ組のなかの最新興勢力がパリの先達を下し、カタールの王族の野望は持ち越された。大手ブックメーカーの勝ち抜け予想をもとにしても、4試合のうち、順当勝ちは半分だ。
それに今季のプレミアリーグの順位表。あれを見れば、サッカーはつくづく分からないものだと思う。少なくともピッチの上では、お金がすべてではないと信じてもいいような気がする。それは、多くの人がこのスポーツを愛する理由のひとつだろう。
たった62人の大富豪が全世界の富の半分を持つと言われるこの時代に、一服の清涼剤として番狂わせを期待するのは、我々大多数の庶民の自然な感情ではないだろうか。
4チームの中で、ダントツで貧しいアトレティコ。
レアル・マドリー、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ、アトレティコ・マドリー。世界的な監査法人が発表する『デロイト・フットボール・マネーリーグ』では、前者3クラブが昨季の売上高ランキングでそれぞれ1位、5位、6位となった。
CLの優勝回数は白い巨人が最多の10度で、ドイツの絶対王者は5回で3位タイ。アブダビとオアシスがサポートするマンチェスターの水色のチームは初めて到達したベスト8を勝ち上がり、未知なる冒険を続けることになったが、欧州制覇にはまだ早い気がする。
そう考えると、『マネーリーグ』で15位につけるスペイン首都のマイノリティーを推したくなる。アトレティコはこれまで、1974年と2014年に決勝へ進んだが、バイエルンとマドリーに悲願を阻まれた(どちらも90分までは同点。'74年は再試合の末、'14年は延長戦の末に敗北)。つまり、今回の抽選では格好のリベンジの舞台が整ったのである。
4強でバイエルンを倒し、ファイナルでダービーが実現して2年前の雪辱を果たすことができれば、エモーショナルなアトレティ(アトレティコのサポーターの愛称)たちは涙を流すはずだ。