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畠山健介が英国で驚きの怒られ方!
「システムと個人判断」のバランス。
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph byKensuke Hatakeyama
posted2016/04/15 07:00
強面なのに、実はとても面倒見がいいニリ・ラトゥ。家も車も、彼のおかげだ。
エディーが重視した「システムと判断」。
日本、特に高校年代のラグビー部では、チームのシステムを重視し、ミスをした選手に「なぜミスしたんだ?」とコーチが怒鳴ることが多い。ラグビーのシステム、コーチングは日進月歩、日々進化している。しかしながら未だに精神論、根性論でコーチングする人が多いのも事実だ。
エディーも、日本代表では徹底的に整備されたシステムを導入していた。そして同時に、そのシステムとは真逆の、精神論や根性論に近いようなことももちろん言っていた。国の代表として戦うプライドや、態度や姿勢の話だ。
エディーがグラウンド内で特に重要視していたのは「判断」だった。
疲れた状況、プレッシャーがかかった状況で、いかに正確な判断ができるか。W杯という大舞台でのプレッシャー、経験したことのない疲労がのしかかる中で正しい判断をするために、毎日死ぬようなキツいトレーニングをしてきた。
堀江翔太がチームに語った「個の判断」の生かし方。
そんなガチガチに整備され、徹底されたシステムで動いていると思われがちな日本代表だが、実はシステムはあくまでベンチマーク(基準)にすぎない。整備されたシステムの外で、ある程度は個々の判断で動いて構わなかった。よく個人で判断してプレーしていたのが、堀江翔太だ。
堀江は突破力、仕事量、経験、リーダーシップ、あらゆる面で日本のトップレベルにいる選手だが、中でも判断力に優れている。
チームのシステムにない動きでも、空いているスペースを見つけたら自らボールを蹴ったり、スペースに走り込んでボールをもらい、突破する。こういったプレーは特にパナソニックでチームメイトのフミさん(田中史朗)と一緒だと、阿吽の呼吸でよく決まった。
ジャパンの練習中、プレーが途切れるようなミスではなく、チームのシステム上の失敗が起きた時、堀江はハドル(円陣)の中でよくこう言っていた。
「あれはミスじゃない。コイツ(ミスした選手)はあの場でそういう風に“判断”してん。その判断を“悪い”とするか、何でもなかったことにするかは、周りの他の選手次第。すぐに反応して、サポートしないと」
ミスではなく、判断。システムを破ろうとしたわけでなく、「チームにとって最適」と判断した。
僕もそうだった。最適と思い判断した。そして怒られた。システムを守れ、と。