畠山健介のHatake's roomBACK NUMBER
畠山健介が英国で驚きの怒られ方!
「システムと個人判断」のバランス。
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph byKensuke Hatakeyama
posted2016/04/15 07:00
強面なのに、実はとても面倒見がいいニリ・ラトゥ。家も車も、彼のおかげだ。
「ハタケ! システムを守れ!」
渡英して1カ月半、家も車も皆のサポートで何とか手に入り、覚えにくかったチームメイトの名前もほぼ覚え、スケジュールにも慣れ、英国生活を楽しみ始めた頃だった。
ある日の練習中、コーチに怒られた。
怒ったのはアタックコーチのデイブ(・ウォルダー)。デイブは三菱重工ダイナボアーズに在籍していたので、日本語も少し話せる。ニューカッスルで右も左も分からなかった僕にとって、日本語で挨拶してくれるデイブは頼りになる1人。デイブは日本人の僕に優しく接し、グラウンド内のことを色々教えてくれた。そんなデイブが練習中、怒りをあらわにした。
「ハタケ! (チームのアタックの)システムを守れ!」と。
僕は驚いた。もちろん「ムッ」とする怒りの感情もあったが、それ以上に驚いたのだ。デイブの言葉に。
「個の判断」の余地が大きいアタックで怒られるとは。
「システムを守れ」
たくさんの国、様々なスタイル、十人十色のコーチングが存在することは理解している。だが、海外は比較的個人のプレーについては自由の幅が大きいと思っていた。
自由というと語弊があるが、ある程度のシステムは存在しても、あとは個の判断に任されているという風に認識していた。徹底してシステムにこだわるのは日本人ぐらいだと思っていたのかもしれない。
それもディフェンスで怒られるなら分かるが、アタックで怒られるとは予想もしていなかった。アタックはディフェンスに比べて「個の判断」の要素が多い。
ラグビーは15人でプレーするチームスポーツで、特にディフェンスで個の判断だけに頼ってしまうと、相手に大きなスペース、チャンスを与えかねない。
逆にアタックは最初の数フェイズは決まったサインや動きなどの約束事があるが、ディフェンスのどこにスペースがあるかで攻め方も変わり、ボールを持った選手がどう判断するかで状況も変わる。この時の僕は、空いているスペースを見つけてボールを持ってアタックしようとしたら、怒られたのだ。