松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
スコアと手応えはいつだって違う?
松山英樹、マスターズ初日の内実。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2016/04/08 11:30
自ら「悪くはない」という5打差につけた松山英樹。走ると強いスピースを掴まえることはできるだろうか。
11番は悪くない、問題は14番のボギーだった。
スコアカードが示すものは、大方、その通り。大きな間違いはないのだと思う。けれど、松山の感覚とは微妙に食い違っていた。
スコア上は11番のティショットを左に曲げてボギーを喫したことがきっかけで、以後、ショットも流れも悪くなったかに思える。上がり3ホールで立ち直るまでの11番から15番までが「苦しみ続けた魔の5ホール」だったように見える。
だが、そもそもショットの感触は前半から「良くなかった」と彼は言う。ときに突風に変わる断続的で難しい風も意地悪な悪戯を仕掛けていたが、風を云々する以前に、自分のショットの感触が前日までとは変わったと感じていた。
「試合になれば多少なりとも変化はあるけど、ここまで悪くなるとは思わなかった」
スコアの動きに関しては「11番でボギーを打ったけど、すぐに12番でいいパーセーブをしているので悪くはない。でも14番でボギーを打ってからは、しんどかった」
いいパーセーブが続いた16番、17番、バーディーで締め括った18番。その上がり3ホールはスコア上は「素晴らしい上がり3ホール」に見えたが、それもまた松山の感覚とは異なっていた。
上がり3ホールの内容を振り返ると、グリーン右奥のバンカーにつかまった16番のパー3。勢いを殺しながらバンカーからうまく打ち出し、ボールはカップに向かってゆっくり転がり始め、観衆も「ゲット・イン!」と叫んだ。しかし、カップに差し掛かったあたりから急にスピードを増して転がり始め、結果的には4メートルもオーバー。だが、これを沈め、見事にパーを拾った。
ティショットが少しだけ左のラフにかかった17番。そこから打った第2打はグリーンの右へとそれていった。しかし、見事に寄せてタップインでパーセーブ。
そして18番は、堂々とフェアウエイを捉え、ピン4メートルに付け、バーディーパットを沈めて、いい締め括り。
どこからどこまでが「しんどい」時間だったのか。
この展開の中、松山はどこからどこまでを「しんどい」と感じていたのか。どこから自分らしい何かを取り戻せたのか。
「17番で難しいアプローチが残った。でも、あそこでパーセーブできたので、最後は18番でバーディーが取れたのかな」
14番のボギーの後の15番と16番、そして17番の2打目までの合計10打の間、松山は「しんどい」気持ちを抱えながら苦しんでいた。
そして17番の「いいアプローチ」でパーを拾ったことでようやく自分を取り戻し、それが18番のバーディーへ。
しんどかった10打、自分を取り戻したラスト5打。この数字は、当たり前だがスコアカードには反映されない。しかし松山自身の感覚においては、苦しい10打を乗り越え、踏みとどまり、ラスト5打で自分を取り戻したことに大きな意味がある。
「後半のあの流れで、バーディーで終われたのは良かった」