松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹にした4年前と同じ質問。
「何がどう悔しい」の答えは――。
posted2016/04/12 11:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
まだ大学生でアマチュアだった松山英樹が2012年に2度目のマスターズ出場を果たし、最終日に「80」を叩いて悔し涙をボロボロこぼしたあのとき。涙が乾かず赤い目をしたままだった彼に「何がどう悔しい?」と尋ねたことを、どうしてだか、このサンデーアフタヌーンに思い出していた。
あのときの松山の悔しそうな顔姿は強烈な印象となって脳裏に焼き付いている。だからなのだと思う。サンデーアフタヌーンに悔しさを抱えてオーガスタの18番グリーンから上がってきた松山に、まず投げかけた第一声は、あのときと同じものになった。
「何がどう悔しい?」
4年前のあのときは「自分が不甲斐ない」と言った。だが、4年後の今日は「わからないです。それは、これから考えます」。
何が悔しいのか、即答できないぐらい悔しい。たくさんの悔しさが溢れ返り、頭の中がまだ整理できていない。
きっと、そんな状態だったのだろう。
毎日口にした「何が起こるかわからないので」。
今週の松山は「何が起こるかわからないので」というフレーズを毎日のように口にした。それは、彼が米ツアーや世界の舞台で、まるでミラクルのような出来事や信じがたい展開、冗談みたいなラッキーやぶん殴りたくなるようなアンラッキー、そんなこんなを直に経験してきたからこそ、大小さまざまな奇跡を心の底から信じることができるようになっていたのだと思う。
初日の終盤に崩れかけながら最後に持ち直し、「可能性をつぶさなくて良かった」と言ったのも、可能性をゼロにさえしなければ、何かが起こると信じていたからこそだった。
2日目は5位、3日目は3位へ浮上。初日につぶすことなく辛くも生き残らせた可能性を、松山は自力で必死に広げていき、首位のジョーダン・スピースが終盤に崩れたおかげで、松山とスピースの差はホールアウト時点での5打から2打へと縮まってくれた。
奇跡は自分で作り出すものではあるが、そんなふうに誰かからもらう奇跡もある。
最終日の松山には、そんなふうに「もらった奇跡」があった。だが、彼はせっかくもらった奇跡のような幸運を、上手く生かすことができなかった。
それが悔しかったのではないか――。
まだ頭の中も胸の内も整理できていない様子だった松山に、そこを尋ねてみることにした。