松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹が最高の状態でマスターズへ。
特別に見せてくれたヤーデージブック。

posted2016/04/07 11:40

 
松山英樹が最高の状態でマスターズへ。特別に見せてくれたヤーデージブック。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

進藤大典キャディが特別に見せてくれたヤーデージブック。昨年(奥)と今年のものではまったく異なっているのが分かる。

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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Sonoko Funakoshi

 マスターズ開幕を翌日に控えたオーガスタの水曜日。最終調整を終えた松山は、クラブハウス前のインタビューエリアで大勢の日本メディアに囲まれていた。

 その真ん中で質問に答える言葉は、きわめていつも通りの彼らしい返答ばかりだった。ショット、パットの仕上がり具合は「どうなんですかねえ。まあ、フツーです」。ショットは上り調子なのではないかと誘導されても「あんまり変わらないけど、まあ、悪くはないかな」。リラックスして練習できたかという問いかけには「フツーに練習ラウンドしていただけなので特別な感じはない」。

 こうして文字で列挙すると無愛想に感じられるかもしれないが、これらは「いつもの松山」らしい返答。むしろ、いつもより穏やかな口調だと思えるほどだった。

 だがそんな普段通りの姿の中で、たった1つだけ、彼はいつもとは異なる「フツーではない」言葉を口にした。

 先週の金曜日に現地に到着し、翌日に初めてオーガスタ入りした松山は、そのときのことを振り返り、こう言ったのだ。

「土曜日に1年ぶりにコースに入ったときは、すごく緊張した。今までで一番緊張した」

 その言葉を聞いたとき、「これは、いいサインだな」と咄嗟に感じた。

昨年の最終日、好スコアでスピースを猛追したが……。

 松山が「一番緊張した」と答えたことが、なぜいいサインだと思えたか。その理由を探る前に、まずは彼の昨年のマスターズを振り返ってみよう。

 昨年大会の松山は10位で最終日を迎えた。だが、首位のジョーダン・スピースとは11打差。挽回できる可能性はゼロではなかったが、限りなく低かった。

 それでも松山は9番からチャージをかけ、その勢いのまま「もう1つ」、「あと1つ」と手に汗握る展開になった。が、「15番のバーディーパットと17番のセカンドショットが悔しい」と本人が語ったように終盤にチャンスを生かし切れず、66の好スコアをマークしながらも、優勝したスピースとは7打差の5位に終わった。

「優勝するためにはストローク差がありすぎた。だから、いいプレーをしても追いつけなかった」

 自分の現実を冷静に分析した松山は「やっぱり勝ちたい。1年後ここに戻ってくるときに、今年以上のものを出せるよう、しっかり作っていきたい」と言ってオーガスタを去っていった。

【次ページ】 今年は「速くて硬い。去年とはまったく別物です」。

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