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誰もが口にする「ハードワーカー」。
岡崎慎司と「ストライカー」の距離。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2016/04/07 10:30

誰もが口にする「ハードワーカー」。岡崎慎司と「ストライカー」の距離。<Number Web> photograph by AFLO

2トップのレスターで、1トップだったドイツ時代とは違う形を身につけつつある岡崎。その愛され度は変わらないままに。

岡崎のゴールで、震度計が揺れを記録。

 それでも相対的に眺めれば、岡崎自身の出来は平均よりも1ランク上の10点満点中7点留りかと思われた。前半の1点を守り通した守備陣の中で、4バックの盾となったドリンクウォーター、最終ライン中央にそびえるロベルト・フート、そして攻守に安定していた左SBクリスティアン・フクスの方が、貢献度は上のようにも思えた。だが『ミラー』紙などでは、岡崎がチーム唯一の8点でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれている。

 ストライカー本来の仕事はゴール。それが2位との差を5ポイント差に拡げる1点となれば、尚更に職務遂行への評価が高まる。遂行の仕方は二の次なのだ。レスターの地元紙『マーキュリー』によれば、ニューカッスル戦での得点時には、地元大学の地震学者がスタジアム近辺に設置していた震度計が、マグニチュード「0.1」未満の揺れを記録したそうだが、仮に岡崎のフィニッシュが泥臭い押し込みだったとしても、キングパワー・スタジアム近辺の地面はゴールに沸く観衆のエネルギーによって揺れていたのではないだろうか?

岡崎はまだ二桁得点を諦めてはいない。

 幸い残る今季リーグ戦6試合でも、岡崎が相手ゴールのネットとスタジアム周辺の地面を揺らしてくれる可能性は十分にある。冒頭のサウサンプトン戦で最も評価されたのは、長距離移動の代表戦から戻ったばかりにもかかわらず64分の交代まで絶え間なく動き回った姿だったが、岡崎は真っ先に得点に迫ってもいた。

 立ち上がり早々の3分には、マーク・オルブライトンからのライナー性のクロスに頭で合わせ、その数分後にもバーディーの折り返しをヒールで決めようと試みている。続けて、バーディーとマフレズがボックス内の岡崎へと立て続けにクロスを狙う場面も見られた。

 そして何より岡崎自身が、立場的にはバーディーをサポートするセカンドストライカーでも、内心では自らの得点への意識を強めている。

 もともとプレミア初挑戦に際して「二桁台の得点を狙いたい」と語っていたレスター新FWは、チームがまさかの首位争いを演じながら後半戦に突入する頃になると、「自分のゴールにこだわっていきたい」とも言うようになっていた。その姿勢が維持されていることは、サウサンプトン戦でボックス内に顔を出した頻度からも明らかだ。

 岡崎には、ブンデスリーガ時代の経験から調子の波に乗るきっかけと信じていた「1試合2得点」が、遅まきながらやって来ないとも限らない。例えば次節で対戦する18位のサンダーランドは、降格回避に向けて死に物狂いではあるものの、31試合を消化して20チーム中ワースト4の55失点を記録している。前節ウェストブロムウィッチ戦が約4カ月ぶりの無失点試合という相手だ。

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