2016年の高橋由伸BACK NUMBER

未完成で、不安定で、一寸先は闇。
だから、2016年の高橋由伸を見よう。 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2016/03/24 11:05

未完成で、不安定で、一寸先は闇。だから、2016年の高橋由伸を見よう。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

コンディションが悪いということで、期待していた捕手・阿部慎之助と岡本和真の二軍行きが開幕直前に決定。新人監督にとって辛い報道が続く……。

原辰徳の図々しさに絶句する由伸の「ふつうさ」。

 昨年末、スポーツ報知で原辰徳と高橋由伸の新旧監督の対談がおこなわれた(11月30日)。こんな会話があった。

原「2016年度、仮に監督をやっていたら、慎之助には『慎之助、来年はキャッチャーだ。ファーストは君には難しい。キャッチャー1本で勝負してくれ。ファーストはもう少し、3割30本くらい打てる人を連れてくるから』というふうに言っているね」

高橋(驚いた表情)

 絶句してしまった由伸。それはそうだろう、阿部慎之助のファースト転向を大々的にぶち上げたのは原前監督である。それをカラッと「慎之助、来年はキャッチャーだ。ファーストは君には難しい」と言ってのけるすごさ。本来、プロ野球の監督とはここまで図々しくないといけないのだろう。

 その言葉に驚いた表情で絶句する高橋由伸は、「こっち側」に近い。奇をてらわない、英雄主義でもない、かぎりなくふつうの人。そんな我々と同じ感覚を持つ人が、今年から監督になる。いったいどうなるのか。気になって仕方ないではないか。

年間130試合、地上波最後のスーパースター。

 そのいっぽう、巨大な力に翻弄されるようにもみえて、運命を引き受けて淡々と「打席に入る」のも高橋由伸のいつもの姿だ。

 いったいどんな1年になるのだろう。

「恐らく、高橋由伸のようなプロ野球選手は今後二度と出現しないだろう。年間130試合、地上波ゴールデンタイムのど真ん中で主役を張り、ニッポンの日常の風景として存在した選手」(中溝康隆『プロ野球死亡遊戯』ユーキャン・自由国民社)

 最後の地上波スーパ―スターなら、引退後に指導者修行をして満を持して監督に就任するというのが本来である。しかしあろうことか、予測不能の由伸政権が誕生してしまった。きれいなヒットではなくイレギュラーバウンドで。

 もういちど言う。ほんとうに、いったいどんな1年になるのだろう。

 ここで個人的な理由も書く。

 新人のころ、1999年にある仕事が私にまわってきた。リアリティーショーを地でゆく番組の「新・熱狂的巨人ファン」という企画に抜擢されたのだ。というか「拉致された」といったほうがいいかもしれない。

 その番組企画はペナントレースの半年間をテント生活し、巨人の中継を見て応援するだけの生活をおくる。巨人が負けたら絶食し、もし優勝したら晴れて名前と顔がテレビで発表されるルール。それまでは顔にはボカシが入る。

【次ページ】 上原のありがたさ、ヨシノブの軽やかさ。

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