なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
何があれば、なでしこは勝てたのか。
五輪予選の「不運と自滅」を考える。
posted2016/03/08 18:00
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
決して事故ではない。事実である。
リオ五輪出場をかけたサッカー女子アジア最終予選。女子日本代表“なでしこジャパン”は7日のベトナム戦で6-1と大勝したが、同日行なわれた中国対韓国戦で2位中国が韓国を下したため3位以下が確定し、上位2チームに与えられる五輪出場権獲得の可能性が消滅した。北朝鮮戦との最終戦を9日に残しているが、こんな展開を誰が予想しただろうか。
振り返れば、初戦のオーストラリア戦(2月29日)を1-3で落としたことが痛かった。10日間で5試合を戦う短期決戦で、最初の躓きがその後のプレッシャーをより大きくしたのは間違いないだろう。
続く3月2日の韓国戦は先制しながらもミスから同点弾を許し、1-1のドロー。この時点で、自力での予選突破の可能性は潰えた。
ただ、その段階では、他チームが星のつぶし合いをしてくれたことで、残り3戦に連勝すれば十分突破のチャンスは残っていた。しかし3月4日の中国戦で2敗目(1-2)を喫し、万事休す。数字上はわずかな可能性が残ったが、事実上の敗退が決まってしまった。
最初の3試合が、いかに特殊な空気だったか。
そして7日、開始時間が早かった試合で中国が韓国に勝利したことにより、可能性は消滅。その結果を受けて迎えたベトナム戦では、むなしくも、いつものなでしこジャパンらしさが散見された。それだけに、いかにそれまでの3戦がなでしこたちにとって特殊な空気のなか行われていたか、うかがい知ることができる。
なでしこジャパンにとっては、ホームでの予選開催が余計に絶対に負けられないという心理的な重圧となり、ましてそのスタートで躓いたとなれば、精神的な焦りが試合毎に増してしまっていたとしても不思議ではない。
長らく澤穂希が付けていたエースナンバー10を引き継いだFW大儀見優季は、予選突破が絶望的となった中国戦後、悔しさや怒り、むなしさが同居するような表情を浮かべ、こう振り返った。
「自分たちの本当の実力を見せつけられてしまった無力感と、何もできなかった責任感。こういうプレッシャーのかかった真剣勝負の場で、持っている力を出せないというのは、それが実力だと認めざるを得ない」