なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
何があれば、なでしこは勝てたのか。
五輪予選の「不運と自滅」を考える。
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2016/03/08 18:00
第3戦となる中国戦敗退後の一幕。この3日後、第4戦を待たず、勝ち点差により五輪出場の可能性は消滅した。
短期決戦の怖さ。
後手に回ったなか、流れを変えるために動く必要性があったのは理解できるが、一度失った流れを取り戻すことは簡単ではないし、それが短期決戦の怖さなのだろう。
韓国戦はGK福元美穂が相手のPKという絶体絶命のピンチを好セーブで凌ぎ、その後に先制点を奪うという最高の流れだったが、直後にその福元のミスから同点弾を許した。中国戦でも開始直後の横山のミドルシュートがクロスバーに嫌われると、MF川村優理の中途半端なバックパスに加え、最終ラインとGKの意思疎通を欠いたことが相手の先制弾につながってしまった。また、韓国戦でミスは出たもののPKを止めた勢いなどを買って福元を中国戦にも先発させたが、もし中国戦のGKが初戦のオーストラリア戦に先発していた山根恵理奈だったら、2点目となったグー・ヤーシャのシュートに手が届いたのではないか(福元の身長165センチに対し、山根は187センチ)。対戦相手はGKが上背のない福元だということで、意図的に高いボールのシュートをねらってきているように感じたのは気のせいではないはずだ。
1つ1つの試合を振り返っても、主将の宮間あやをはじめとしてミスが目立ち、ツキを欠いた。「自滅」という表現をする選手も目立ったが、本来持っている力を発揮できなかったのは確かだろう。
ただ、他チームも同様に勝ち点を稼げず、日本にも立て直す機会はあったのに、それを生かせなかった。とくに2戦目が終わった段階で勝ち点1と沈みながらも、第3戦の中国戦に勝てば視界が開けそうな展開だったにもかかわらず、それを打破できない辺りに、チームに決定的な何かが欠けているように思えてならなかった。
なでしこジャパンは決して“事故”に遭ったわけではなく、敗れるべくして敗れたのである。