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高橋監督が井端コーチに託した
岡本和真、2年目の“英才教育”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/03/04 10:40
昨季、8月28日の中日戦で一軍デビューし、9月5日のプロ初安打が本塁打だった。
松井秀喜も含め、打撃の才能は誰もが認める。
一方、打撃に関してはこのキャンプでも期待の声が多く聞こえてきた。
「ボールとの距離の取り方には天性のものを感じますね」
こう評したのは、宮崎キャンプで臨時コーチを務めていた松井秀喜さんだった。
キャンプではステップ幅が広くなりすぎる癖を矯正するために、打撃練習で両足をゴムバンドで固定するなど昨年から取り組んできた課題克服を徹底して反復練習している。ファーム時代から見てきた内田順三打撃コーチが、今季から一軍担当になったのも、一貫した指導という点では岡本に好材料となっている。
そうして3月1日の日本ハムとのオープン戦では、2月のオープン戦4試合で無安打に終わった鬱憤を晴らすように4安打の固め打ち。5回には2番手の斎藤佑樹投手から、9回にはクローザーの増井浩俊投手から2本の二塁打を放つなど長打も飛び出し結果も出た。
こと打撃に関しては、天性の才は誰もが認めるところなのである。
だからこそ勝負は守りなのだ。
名手にならなくてもいい、普通の守備を。
「育てるためにムリに(岡本を)使うということはしない。村田(修一内野手)だって、まだまだ負けないというつもりでやっていると思うし、あくまで競争ですから」
こう語る高橋監督の目にも、去年から岡本を使えるか使えないかの大きな関門は、守りにあると映っていたわけである。
育てるために我慢して使い続ければ、打撃でそこそこの結果を残すことは期待できるだろう。ただ、我慢して使い続けるためには、最低限の守備力が求められる。とりあえずは村田のような三塁守備の名手にならなくてもいい。捕れる範囲のボールを確実に捕球して、正確にスローイングができること。そこが岡本の一軍への道のスタートになる。
きちっと守れるようになれば、あの魅力的な打撃が初めて生きてくることになる。