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投手ランクとダルビッシュ有。
~日本人投手の評価が低すぎる!?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2016/02/13 10:30
開幕には間に合わなさそうだが、万全のダルビッシュならば夏前からでも二桁勝利は十分に可能だ。
レギュラークラスの300位以内には青木宣親が。
12位のA・J・パーリク(ポロックとは発音しない。ダイヤモンドバックス)、14位のムーキー・ベッツ(レッドソックス)、21位のジョージ・スプリンガー(アストロズ)といった面々だ。
3人とも外野手で、共通点は「20本塁打/20盗塁」が期待できることだろう。開幕時の年齢は、パーリクが28歳と最年長で、ベッツが23歳の最年少。スプリンガーは真ん中の26歳だ。パーリクとベッツは、打率3割を超える可能性もかなり高い。スリリングという形容がぴったり来る。
このレベルになると、日本人野手はなかなか食い込めない。青木宣親(マリナーズ)が255位に顔を出しているが、これが現状では精一杯か(全体で300位以内ならばレギュラー・クラスだ)。21世紀初頭のイチローがいかに傑出した選手であったかが、あらためて浮き彫りにされる。
投手では31位に田中、35位にダル。
では、〈投手だけのランク〉はどうだろうか。
〈先発投手のランク〉に限っていうと、30位以内には若手が少ない。13位のホゼ・フェルナンデス(マーリンズ、23歳)、19位のノア・シンダーガード(メッツ、23歳)、27位のマーカス・ストローマン(ブルージェイズ、24歳)、30位のカルロス・マルティネス(カーディナルス、24歳)が眼につく程度で、上位には、カーショーを筆頭に、ジェイク・アリエータ(カブス)、マックス・シャーザー(ナショナルズ)、クリス・セール(ホワイトソックス)といった常連が並んでいる。田中は31位、ダルビッシュは35位、岩隈は43位、前田は72位。
故障を抱える田中や岩隈はともかく、ダルビッシュの35位は明らかに過小評価だろう。肘の故障で戦線を離脱したのが2014年夏、トミー・ジョン手術を受けたのが'15年春だから不安が大きいことはたしかだが、私はこの休養期間をむしろプラス材料と受け止めたい。なにしろ、潜在能力の高さでは全米でも5本の指に入る投手だし、'14年開幕時には、ア・リーグのサイ・ヤング賞最有力候補に挙げられていたほどの逸材なのだ。制球力を高めて'16年と'17年を乗り切れば、FA権を得る'18年からは相当の大型契約も期待できる。焦らずに再出発して、200奪三振と3点台前半の防御率をめざしてほしい。
ダルビッシュのつぎに期待をかけたいのは前田健太だ。体重が軽い(72キロ)ことと三振奪取率が低い(7.4個/9回)ことは懸念材料だが、制球力と環境の変化に対する適応力の高さは前田の武器だ。ドジャースが右腕投手の柱を必要としていることも彼には追い風だろう。スライダーとチェンジアップを効果的に使えれば、3点台前半の防御率と12勝前後の勝ち星は期待できると思う。