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世界を相手に試されるJリーグ流戦術。
広島、まずはオセアニア王者に完勝。
posted2015/12/11 11:30
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
AFLO
Jリーグでの“常識”は、世界での“武器”となるのか。これが、サンフレッチェ広島のクラブワールドカップでの戦いを観察する上での、大きなポイントだと思っている。
広島の基本フォーメーションは、3-4-2-1。攻撃時には2ボランチの1枚が最終ラインに下りて4-1-5に近い形となり、守備時には両アウトサイドが最終ラインに入って5-4-1となる。
「可変システム」とも言われるこの仕組みは、普段からJリーグを見慣れている人にとっては、もはや常識だ。広島だけでなく、このシステムの“生みの親”とも言えるペトロヴィッチ監督率いる浦和レッズ、湘南ベルマーレ、ヴァンフォーレ甲府、松本山雅などなど。Jリーグの多くのクラブが3-4-2-1のシステムを採用し、対戦相手は「可変システム」に対応するためにさまざまな策を練ってくる。
一方で、ヨーロッパをはじめとする海外サッカーを観ていても、なかなか3-4-2-1と出会うことはない。UEFAチャンピオンズリーグでも、ほとんどのクラブが4バックを採用しているし、3バックの文化が残るイタリアでも、最終ラインの前に司令塔タイプを置く3-1-4-2か、トップ下を配備する3-4-1-2が主流だ。
つまり、Jリーグで当たり前となっている戦術が、世界の中では“ガラパゴス化”しているというわけだ。ならば、クラブワールドカップの舞台で海外クラブがこのガラパゴス戦術と対峙したとき、彼らは驚き慌てるのか、「そんなものは子供騙しだ」と捻り潰してしまうのか。それが、気になっていた。
オークランドは、明らかに戸惑っていた。
12月10日の開幕戦に関して言えば、オークランドシティは明らかに「可変システム」に戸惑っていた。まずは、広島の攻撃面に対して。4-3-3のシステムで挑んだオークランドは、両アウトサイド(右の柏好文、左の清水航平)に、ウイングが下がって対応するのか、サイドバックが前に出るのか曖昧だった。その結果、この2人は自由な状態で前を向くことができ、9分には清水が突破からクロスを入れ、それが逆サイドに流れた展開から柏が再びクロスを蹴り込んでCKを獲得し、皆川佑介が先制点を押し込んだ。70分には柏がドウグラスへの縦パスを通し、その内側を走り抜けた塩谷司のクロスがオークランドの選手に当たってゴールネットが揺れた。