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ホッケーの代表監督を引き抜いた!?
独サッカー協会の仰天プロジェクト。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2015/12/06 10:30
ロンドン五輪でホッケーの男子代表を率いて金メダルを獲得した名将のヴァイゼがドイツサッカー協会入りした。
ホッケーから転身した者は初めてではない!?
ヴァイゼはこれからの練習は、量よりも質の時代になると考えている。
「練習には2本のネジがある。1つは量のネジ、もう1つは質のネジだ。多くの場合、すでに量のネジを回しきっているが、質のネジは回す余地が残っている。たとえばボールがないところの動きで、パフォーマンスを20から30%あげることができる。ただ激しいだけでなく、賢く練習しなければダメだ」
実はホッケーからサッカーへの転身はヴァイゼが初めてではない。彼の前にホッケー男子ドイツ代表を率いていたベルンハルト・ペータースが、2006年10月にホッフェンハイムの育成ディレクターになってすでに道を切り開いていた。
ペータースはホッケー監督としてW杯で2度優勝しており、当時ドイツ代表の監督だったユルゲン・クリンスマンから誘われ、ドイツサッカー協会のスポーツディレクターに就任する予定だった。しかし協会の内部から「なぜホッケーの人間なのか」と猛反発を受け、計画は頓挫してしまう。結局、その役職に選ばれたのはマティアス・ザマー(現バイエルン・スポーツ部門取締役)だった。
だが、ホッフェンハイムがペータースを招き、“ホッケー監督”に扉が開かれる。ホッフェンハイムで育成のコンセプトを整え、ブンデスリーガU17やU19で優勝を成し遂げた。その8年間の業績が認められ、2014年8月にハンブルガーSVにスポーツディレクターとして引き抜かれた。ペータースは選手心理を熟知しており、組織に一体感を生み出すのがうまい。
原辰徳、E・ジョーンズなら、どうなのか?
コミュニケーションやマネジメントの能力は競技には関係ない。きっとヴァイゼも、サッカー界にポジティブな驚きを与えるに違いない。
このDFBの取り組みを日本サッカーに当てはめたら、どんな化学反応が起こるだろう。
たとえばプロ野球・巨人の原辰徳前監督は、2009年にワールド・ベースボール・クラシック日本代表の監督を務め、チームを世界一に導いた。
ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチは、2007年にチームアドバイザーとして南アフリカ代表のW杯優勝に貢献した。
彼らには球団特別顧問やイングランド代表ヘッドコーチといった本職があり、フルタイムでサッカーに携わることは難しくても、育成やW杯本番といった機能限定のアドバイザーという形なら連携の可能性もゼロではないはずだ。
日本代表の進化のスピードを上げるには、きっと他分野のエキスパートの力が助けになる。