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ホッケーの代表監督を引き抜いた!?
独サッカー協会の仰天プロジェクト。
posted2015/12/06 10:30
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
「GKコーチだけでなく、攻撃コーチ、守備コーチ、技術コーチ、戦術コーチなど、スペシャルコーチを増やすことを計画している」
ハンジ・フリック(ドイツサッカー協会スポーツディレクター)
ドイツサッカー協会(DFB)が「100年に1度」のプロジェクトを始動させた。
これまでドイツ代表には決まった練習拠点がなく、年代別代表を統括するエリートセンターもなかった。そこで今回、ドイツ代表のマネージャーのオリバー・ビアホフが発起人となり、スポーツディレクターのハンジ・フリック(前ドイツ代表コーチ)のサポートを受け、近代的な「DFBアカデミー」を設立することになったのである。
フランクフルト中央駅からコンメルツバンク・アレナに向かう途中にある競馬場を閉鎖し、その広大な敷地にDFB本部、A代表の練習場、年代別代表の施設、監督養成所、審判養成所、室内サッカー場が建設される。
建設の総予算は1億900万ユーロ(約142億円)。ガンバ大阪の新スタジアムの総工費とほぼ同じ金額だ。室内サッカー場だけで26億円かかり、地元から反対の声も挙がったが、今年6月の住民投票によって正式にゴーサインが出た。
だが、いくら資金を投じて最先端のハードをそろえても、ソフトが古びていては機能しない。すでにドイツは2000年の大改革によって「育成大国」になっているが、さらに他国の先を行くべく、DFBアカデミーの指導法や人材にこだわろうとしている。
スポーツディレクターのフリックは、DFBの公式サイトでこう語った。
「まだサッカー界では、プレーの効率を測ることができていない。ゴールやアシストは誰でもいいとわかるが、スペースへのフリーランニングや、自陣での横パスに、各場面でどんな効果があるかを測れていない。その複雑な現象を数値化する技術を発展させたい」
サッカーにはまだ開発すべき余地がたくさんある!
指導者の概念も変えるつもりだ。これからは専門知識がより重視される。
「GKコーチだけでなく、攻撃コーチ、守備コーチ、技術コーチ、戦術コーチなど、スペシャルコーチを増やすことを計画している。この分野に、ものすごく大きな可能性がある。睡眠や健康に関する研究も取り入れる。W杯は短期決戦なので回復が鍵になる。何時に現地に到着し、何時に出発するといった医学的知見がとても重要なんだ」
そしてフリックは続けた。
「さらに私たちは他のスポーツに目を向け、そこから専門知識を吸収していかなければならない」