プロ野球亭日乗BACK NUMBER
最高の打線が選びがちな“打って還す”。
侍ジャパンに小技は本当に必要ないか。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/11/12 11:50
6番に入った中田翔が先制弾、サヨナラと大活躍。中村剛也との4番争いはまだ終わっていない。
稲葉コーチ「決めるべきところでバントを」
プレミア12開幕直前までチーム編成ができずに出場辞退のウワサも飛び交ったメキシコも、そんなハイエナ軍団のひとつである。
だから侍ジャパンもきちっとやるべき野球をやりきらなければ、やられる。
それが苦戦の原因だった。
2回にいきなり先発の前田健太(広島)が4番のロバート・ロペス内野手に一発を食らって先取点を許した。2回に中田の2ランで逆転すると、その後は侍ジャパンが常に先手、先手で進めたゲームだった。
ただ、である。
「国際試合というのは相手投手もどんどん交代してくるし、とれるところで点をとらないとダメ。そういう意味では6回でしたね」
苦戦の原因をこう分析したのは稲葉篤紀打撃コーチだ。
5-3と2点差に迫られた直後の6回の攻撃だった。先頭の8番・平田良介外野手(中日)が左前安打で出塁。9番の炭谷銀仁朗捕手(西武)が送りバントの構えをしたが、結局、強行策に出て投ゴロ併殺打に倒れた。
「決めるべきところでバントを決めないと……。結果的には直後の秋山(翔吾外野手、西武)にヒットが出ているわけですから。そういうことで相手に流れを与えてしまうことになる」
稲葉コーチの指摘だった。
最高の打線は、逆に打って還す野球をしがち。
7回には先頭の山田が四球で出塁。続く中村が三振、筒香の打席で山田が二盗を決めて無死二塁となり、筒香の内野ゴロで三塁へ。中田が歩いた2死一、三塁で松田宣浩内野手(ソフトバンク)が三振に倒れて追加点を奪うことができなかった。
現在NPBでプレーする選手の中では、考えられる最高に近いメンバーが揃った今回の侍ジャパン。どのポジションにもそれぞれチームの主力を任される選手たちが揃って、打線も7番に松田、8番に平田と普段はクリーンアップを任される選手が集結している。そこでどうしてもヒットを待つ野球、とにかく打って還す野球を選択しがちになるのは仕方ないところなのかもしれない。結果として、この日の送りバントは1つもない。とにかく打って、安打を連ねて点を取る野球に終始するしかなかったのである。
それがドリームチームの面白さであるとともに、裏腹に抱える難しさでもあるわけだ。