逆にメキシコの方が小技を絡めてきた。

　一発勝負の国際試合。7回に1点差と迫られたのは、メキシコに無死一塁からプッシュバントで安打を決められ、さらに一、二塁となった直後に、三塁線への絶妙な送りバントをマウンドの大野雄大投手（中日）と三塁手の松田が譲り合うような形になってピンチを広げた結果だった。さらに9回には無死一塁からスリーバントを決められて同点に追いつかれている。

　そうした場面を見ると、どちらが日本のやるべき野球をやっていたのかは明らかだった。

　だからなおさら6回のあの場面である。決めるべき場面できちっと小技を決めきらないとどうなるか。この試合が改めて教えてくれたことだった。

「中田の本塁打から始まって、最後はサヨナラ。打線がよくつないでくれた。サヨナラで勝ち切ったことが良かった。（7回の）バント処理は投手が自ら捕りにいかないと……。その辺はピッチングコーチともよく話し合っていきます」

　試合後の会見をこう締めた小久保裕紀監督。

　とにかく勝つことがこの大会のミッションである。どんな展開でも、どんな野球でも勝ったということが、一番の収穫であることは間違いない。

　ただ、ハイエナの群れの中を優勝に向かって突き進んでいくのだ。そのためには、もう1度、日本の野球を見直し、1点を確実に奪っていくことしかない。

　そのテーマをはっきりと見せてくれた試合だった。