プロ野球PRESSBACK NUMBER
“2000本安打”の真髄を伝えたい……。
広島の打撃コーチ・石井琢朗の現場感。
posted2015/11/13 10:30
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
NIKKAN SPORTS
2015年11月1日、広島の秋季キャンプ初日を迎えた宮崎県日南市天福球場。
まだ肌寒さを感じる朝7時過ぎ。静かな球場にひとり、外野のフェンスに正対して素振りする姿があった。打撃コーチに就任した石井琢朗新コーチだった。
「選手にやらせる前に自分がやってみないとね」
石井コーチは選手に秋季キャンプで1日800~1000スイングを求めた。振る力をつけることが狙いだ。スイング数はあくまで自己申告制。練習だけでなく自主練習もカウントし、極論「夢の中で振った数も入れていい」という。強制ではなく、意識の問題だ。
実際にキャンプでは、あの手この手でバットを振らせようとしている。午前中は基本的に守備中心。あとはひたすらバットを振り込む。
6グループに分かれ行なわれる打撃練習では、ティー打撃やフリー打撃だけでなく、ロングティーや細いバットでノックを打つように外野へ飛球を飛ばす練習。連続でティー打撃を打ち込む“連ティー”などもある。全体練習が終われば重点練習が行なわれ、コンディショニングと軽食時間を挟んで夜間練習もある。
「素振りで始まり、素振りで終わる」と石井コーチ。古風な練習も、打撃の基本。王貞治氏や松井秀喜氏、金本知憲阪神監督ら球史に名を残す強打者は、素振りで打撃を作り上げてきた。
練習初日から両手がマメでボロボロになる選手も……。
早出特打や夜間練習では、打撃手袋をつけずに振る。
「感覚をつかむことができる。グリップが利かない分、握力が必要になるからね」
今キャンプの早出組の恒例となった、フェンスに沿って素振りをしながら球場周回する練習は、冒頭で自ら試したメニューだ。選手からするとたまったものではない。初日が終わった段階で両手がマメでボロボロになっている選手もいた。
「基本的なことは変わらない。改革なんて大それたことは思っていない。あくまで昨年まで積み重ねてきたものを継承しながら、いかに積み重ねていけるかだと思っている」