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広島がJ3連覇中の「反則ポイント」。
球際の激しさとクリーンの両立は?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/07 08:00
佐藤寿人はJ屈指の点取り屋であると同時に守備での貢献度も高い。それでもカードをもらわないという異能の持ち主だ。
広島は昨年まで3年連続で最高成績を続けている。
近年、J1優勝争いの常連となっている広島だが、反則ポイントでは'10年、そして'12年から'14年まで3年連続で最小数値をマーク。それも「10→-4→-19」と年を経るごとに良化してきた。
そして広島を率いる森保一監督が就任したのは'12年。この年以降“3連覇”を果たしているのが非常に興味深い。
広島のスタイルで真っ先に思い浮かべるのは、ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督(現浦和監督)時代から継承される後方からのポゼッション。ボールを保持する時間が長くなる分だけ、ファール数は自ずと少なくなる。ただディフェンスに回る時間帯を見ていても、球際では正当なチャージで奪おうとし、不要なファールは極力控える規律の高さを感じる。
また、今季ここまで出場停止を受けた選手の数も最少の「1」。つまり、主力を出場停止で欠く状況を回避できているのも、連動したパスワークを武器にする広島にとっては大きなメリットとなる。チームの顔であるゴールゲッター・佐藤寿人が3度('07、'12、'13年)にわたってフェアプレー個人賞を受賞しているのは、決して偶然ではない。
鋭い出足ながらも、フェアな守備。
反則ポイントは“強いサンフレッチェ”を示すデータと言えるだろう。
J1初優勝時のスピーチで森保監督が語っていたこと。
思い出すのは'12年に取材したJリーグアウォーズでのこと。
この年、広島はJ1初優勝を遂げた。そして前述した通り、2年ぶりとなるフェアプレー賞(高円宮杯)も受賞している。
当時の取材ノートを見直してみると、森保監督のスピーチのメモが残っていた。
「トレーニングの時からクリーン、そして激しく、厳しくプレーしました。勝つために試合をしていても、人を傷つけるようなファールをしない。そして暴言を吐いて無駄なイエローをもらわないようにしよう、と言い続けてきました。ただ我々指導者が言い続けても、選手が意識しなければ変わりません。試合中に熱くなっている時も、常にクリーンかつ厳しくプレーすることを忘れずにプレーしてくれたことを誇りに思います」
このメンタリティは、森保体制4年目となる今シーズンも不変なのだ。
'13年以来となるJ1制覇を目指す広島。セカンドステージ残り2試合は攻撃力抜群のG大阪、切り替えの早さが身上の湘南が相手となる。この難敵に対しても激しくクリーンな戦いを貫けば、タイトル獲得、そして「フェアプレー4連覇」が大きく近づいてくる。