Jをめぐる冒険BACK NUMBER
何度でも甦る鹿島、ナビスコ杯優勝。
2年間の世代交代が実り、黄金期へ。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/02 11:50
キャプテン・小笠原満男は13年ぶり2度目のMVPに輝く活躍を見せた。
13年ぶり2度目のMVPに輝いた小笠原。
もちろん、独特のリズムでG大阪DFを撹乱した中村充孝、巧みにボールを引き出し、G大阪DF陣の脅威となった金崎、赤崎秀平の2トップの働きも見逃せないが、ひと際輝いていたのがこの日、13年ぶり2度目のMVPに輝いた小笠原だった。
セカンドボールを何度も拾えば、狙いすまして遠藤保仁やパトリックからボールを奪い取り、ゴール前まで飛び出していく。
ピッチ上の誰よりもタイトルを手にしてきたはずの男が、ピッチ上の誰よりもタイトルを渇望しているように見えた。
前半のシュート数は12対2。決定機の数は5対0。これだけ押し込みながら得点を奪えなければ、サッカーの神様にそっぽを向かれてしまうものだ。
実際、後半の立ち上がりは、パトリックと宇佐美にフィニッシュまで持ち込まれ、試合の流れがG大阪に傾きつつあるかに思われた。
だが、鹿島はやはり老獪だった。そして、流れを引き戻したのも、小笠原だった。
小笠原の右足から放たれた2本のCK。1本目はゴール正面に飛び込んだファン・ソッコが頭で合わせ、2点目はファーサイドで鈴木優磨が折り返し、金崎が頭で押し込んだ。
その後、途中出場のカイオが右足で豪快に蹴り込み、最終スコアは3-0。鹿島が隙を見せることは、最後までなかった。「本当に叩きのめされた。まったくと言っていいほど何もできなかった」と、今野も脱帽するしかなかった。
第1ステージと打って変わっての快勝。
それにしても、第1ステージを一度も連勝することなく中位で終え、シーズン途中でトニーニョ・セレーゾ前監督の解任に踏み切ったのは、わずか3カ月ほど前のことだ。その頃、チームは間違いなく危機的状況を迎えていたはずだった。
ところが、どうだろう。第2ステージでは優勝争いを繰り広げ、3年ぶりとなるタイトルまで勝ち取ってしまった。
この復活劇を考えたとき、“戦う姿勢”と“自主性”を選手に取り戻させた石井正忠新監督の指導力も見逃せないが、浮かび上がるのは計画的なチーム作りとリカバリー力だ。