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何度でも甦る鹿島、ナビスコ杯優勝。
2年間の世代交代が実り、黄金期へ。 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2015/11/02 11:50

何度でも甦る鹿島、ナビスコ杯優勝。2年間の世代交代が実り、黄金期へ。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

キャプテン・小笠原満男は13年ぶり2度目のMVPに輝く活躍を見せた。

「満男が戻って、鹿島は変わった」

 オズワルド・オリヴェイラ体制の1年目の'07年。夏に小笠原がイタリアのメッシーナから復帰すると、鹿島はシーズン終盤に破竹の9連勝を飾り、J1逆転優勝を成し遂げた。

 その数日後、鹿島の元キャプテン、本田泰人からこんな話を聞いたことがある。

「『本田さんたちがよく『チームのために』って言っていたことの意味がようやく理解できるようになりました』って、満男が言うんだ。イタリアで試合に出られなくて、いろいろ思うところがあったんだろうね。帰ってきてからの満男はチームのために走り、周りを鼓舞し、戦っていた。満男が戻って、鹿島は変わったと思う」

 自身のプレーだけに集中しがちだった小笠原の意識が変わり、鹿島は'02年以来、5年ぶりとなるタイトルを手に入れた。タイトル獲得に足りなかった“何か”を埋めたのは、小笠原が放った強烈なリーダーシップだったと本田に説かれ、納得したものだった。

 小笠原にとってのきっかけがイタリアでの不遇ならば、鹿島の若い選手たちにとってのきっかけは、2年間の無冠とシーズン途中での監督交代を乗り越えて掴んだ今回のタイトルかもしれない。

世代交代を乗り越えて、黄金期が始まる。

「今日も満男さんは本当に球際で強く、MVPをもらうのも当然のレベルだったと思いますし、ソガさん(曽ヶ端準)ももちろん、モトさん(本山雅志)もベンチから声を掛けてくれて、ああいう先輩の背中を見て学ぶことが多いので、まだまだ現役を続けてほしいと思います。本当に'79年組は偉大だなと思います」

 22歳の昌子の言葉には尊敬の念が込められていたが、その'79年組も栄光とタイトルだけに彩られてきたわけではない。小笠原がひと言、ひと言、噛みしめるように言う。

「俺らだって、いい思いばかりしてきたわけじゃない。チームでも代表でも悔しい思いをしてきた。そういうのを経験して、若い頃にはなかったもの、この年齢になって見えてきたものがある」

 また、キャプテンはこうも言った。

「ひとつ取っただけで満足してもらっては困る。僕はまた優勝したいっていう気持ちなので、みんなもそういう気持ちであってほしい」

 まだまだタイトルへの渇望に陰りのないベテランと、主力として堂々と戦い、タイトルの味を知った若者たち――。

 これまで鹿島は世代交代を乗り越えたあと、黄金期を築いてきた。

 今回のタイトル獲得が、もう何度目にもなる鹿島の黄金期の始まりになるということを、歴史は教えてくれている。

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