フットボール“新語録”BACK NUMBER
球際を、強さではなくうまさで制す。
本田が柴崎に求める世界への“慣れ”。
posted2015/10/21 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Takuya Sugiyama
「イニエスタや中田英寿さんは、バランスを崩しかけても背中が使えているので、腕を後ろに振って足を細かく動かし、体勢を立て直せる。ミュラーのごっつぁんシュートも同じ原理です」
西本直(トレーナー)
体と体のぶつかり合いを好むパワフルな相手を、日本は苦手とする――。10月13日のイラン戦で、あらためてその課題が突きつけられた。
もちろん日本代表の中にも、ぶつかり合いに強い選手がいる。吉田麻也らセンターバック、ドイツ移籍初年にマガト流のスパルタで鍛え抜かれた長谷部誠、そして体格に恵まれた本田圭佑らなどだ。多少調子が悪くても、長谷部と本田が試合から消えることが少ないのは、体の強さが最低限のパフォーマンスを担保するからだろう。
だが、日本代表においてそういう選手は少数派だ。
特にイラン戦で先発した柴崎岳は、類まれな技術・発想・視野を持っているだけに、1対1の弱さを克服することが望まれる選手だ。テヘランにおける試合では、ほぼ何もできずに後半27分で退いた。
日本の“うまい選手”たちは、どうすれば1対1に強くなれるのか?
本田「パワーをつけろということではない」
イラン戦後のミックスゾーンで、本田圭佑はこう指摘した。
「岳には岳にしかない特徴がある。それをハイレベルな舞台で出すことに慣れていかないといけない。しかし、パワーをつけろということではない。たとえばイニエスタはそこまで球際は強くないんでね。でも彼には、そうならないうまさがあるんですよ」
“そうならないうまさ”とは具体的にどんなものか。以前、本田はACミランにおけるプレーについて、こう説明したことがある。
「まわりにパスコースがない状態で受けに行くのと、ある状態で受けに行くのとでは全然違う。ミランでは前者なので苦しくなる」