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球際を、強さではなくうまさで制す。
本田が柴崎に求める世界への“慣れ”。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/10/21 10:40

球際を、強さではなくうまさで制す。本田が柴崎に求める世界への“慣れ”。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

西本トレーナーによると、柴崎は中田英寿のように広背筋を使って姿勢を保っており、むしろぶつかり合いを苦にしないタイプだという。

風間八宏の「衝突点を変える」アプローチ。

 また、川崎フロンターレの風間八宏監督はドイツで5年間プレーしているとき、「衝突点を変える」というやり方を利用していたという。

「相手がぶつかろうとする点より、半歩踏み込んでぶつかる。そうしたら最大の力は発揮できないですよね? ボクシングのパンチで、手が伸び切る前に止めたら威力が小さくなるのと同じです」

 もし相手が背後からついてきたら、急ストップしてぶつかり、相手の体勢を崩すという手もある。とにかく予測をくじくことがポイントだ。

トレーナー・西本直が注目する“倒れなさ”。

 とはいえ、岡崎的なぶつかり方にはある程度のパワーが必要とされ、風間流には独特のセンスが要るだろう。それに対して、体の使い方そのものに注目するのが、トレーナーの西本直である。

 すでに本コラムで度々“西本理論”を伝えてきたように、ポイントは背中にある。背中には「広背筋」という人体で最も大きく、かつ上半身と下半身をつなぐ極めて重要な筋肉がある。それを伸びやかに使うことで、骨盤が立ち、股関節の自由度が増してしなやかなステップが可能になる。さらに言えば、広背筋の上半身の終点は上腕にあるため、うまく肘を後ろに引けば、下半身の動きを助けることができる(詳しくは西本直のブログを参照)。

 西本はイニエスタと中田英寿をお手本にあげた。

「イニエスタは背中がきちんと使える代表的選手で、常にステップワークで体勢を維持することができ、だから相手にぶつかられないポジションに移動できる。かつて日本代表で活躍した中田英寿さんの動きも同じ。バランスを崩しかけても背中が使えているので、腕を後ろに振って足を細かく動かし、体勢を立て直せる。ゴール前のトーマス・ミュラーのごっつぁんシュートも同じ原理です。ロッベンの練習動画を見ると、腕を細かく後ろに振るステップワークをしている。ここで名前をあげた選手たちは、背中を使い、細かいステップワークで体勢が崩れず、だから伸筋を使ってコンタクトに対応できるのです」

 もしかしたら本田の言っている“そうならないうまさ”も、背中をうまく使って倒れないことを直感的に表現したものだったのかもしれない。

【次ページ】 Jでは柴崎も良い角度でぶつかっている。

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