岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
体格で劣り、守りきれないからこそ。
日本ラグビーの活路は攻撃にある。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2015/09/17 10:30
攻撃的なスタイルの起点として重要なスクラム、モールをエディー・ジョーンズは継続的に強化してきた。その成果をW杯で発揮できるか。
鍵を握る、ターンオーバーとセットプレー。
ならば日本は、攻撃的なラグビーで具体的にどうチャンスを作り出すのでしょうか。
まず、敵の守備ラインが揃ってしまう前に攻撃を仕掛けていくのは大前提になります。他のスポーツと同様に、ラグビーでもトライが多く生まれるのは、ターンオーバー(ボールを奪った瞬間)から素早くスペースを突いていく展開です。
同時に、ラインアウトやスクラムといったセットプレーも、決定的に重要になります。ラグビーの試合ではセットプレーの場面がたびたび訪れますが、サッカーにおけるフリーキックやコーナーキックの場面と同様に、大きなチャンスにつながります。ラインアウトやスクラムでは、自分たちが理想とする形でパスをつないでいけるように、選手があらかじめ陣形を整えることができます。そこで確実にボールをキープできれば、システム(組織プレー)で勝負できるようになるからです。
「型」のない状況に「型」を生み出す。
ただし、この議論にはもう少し説明が必要かもしれません。
ラグビーの場合、セットプレーとオープンプレーは、「ストラクチャード(『型』のある状況)」と「アンストラクチャード(『型』のない状況)」という呼び方をします。
日本代表が目指す攻撃的なラグビー、すなわち自陣からでもパスを繋いでいくスタイルは、実は、個の能力に頼って自由にボールを回していくという発想ではありません。オープンな状況の中で、さらに組織的ではない戦い方をしようものなら、もろに殴り合いの展開になり、体格で上回る相手の思い通りに試合が運んでしまいます。
しかしオープンな状況の中から、セットプレーに近い状況を意識的に作り出していくことは可能です。具体的に言うならば、モール・ラックといった密集プレーで起点を作りながら、他の選手たちがいち早く本来のポジションに戻って陣形を整え、攻撃のルートを確保していくイメージです。
日本が得意とする戦術的なプレーや組織的な戦い方が生きてくるのは、まさにこの瞬間になります。オープンな状況からセットプレーに近い状況を幾度となく作り、自分たちの『型』にはめていく。これこそが「ジャパン・ウェイ(日本らしい戦い方)」の真髄なのです。