サムライブルーの原材料BACK NUMBER
2年ぶりの直接FK弾を蹴り込むために。
本田ら選手にハリルが仕掛けた挑発。
posted2015/09/08 10:50
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Asami Enomoto
何本、打ったっけ?
カンボジア戦が終わって埼玉スタジアム5階の記者席から1階のプレスルームに引き上げる際、取材ノートを広げてシュートを数えてみた。30本を過ぎたあたりで別のことが気になった。
あれ、何本あったっけ?
シュートを乱れ打った記憶も、チャンスを活かせなかった10本以上のCKの記憶はあっても、直接FKの記憶がなかったからだ(公式記録で確認すると1本)。
案の定と言うべきか、セットプレーからの得点を課題に挙げていたヴァイッド・ハリルホジッチは、試合後の会見でこの点について口を尖らせている。
「FKは改善しないといけない。FKもPKももらわなかった。まだFK(からの得点)がないが、これは本当に信じられない。3-0で勝ったとはいえ、まだまだ足りないところがある」
これほど直接FKの場面がなかったのも珍しい。閉じこもるカンボジアに対して、日本がサイドからの攻略を軸としたことなど様々な背景はあるにせよ、ゴール近くで仕掛けてファウルを誘うようなシーンは見られなかった。FKがゴールに結びついていない現状と無関係ではないようにも思えてくる。
「背景」ばかりでなく「現状」も重なって、直接FKが皆無に等しいゲームになったと解釈できなくもない。
日本の直接FKは2年間決まっていない。
いつからかFKが日本の武器ではなくなってしまった。
直接FK弾となると、'13年9月、グアテマラを相手に遠藤保仁が決めて以来、2年間も入っていないことになる。決定力と勝負強さで今日の日本代表を引っ張ってきた本田圭佑も、ことFKに限っては'13年8月のウルグアイ戦で決めて以降ずっと遠ざかっている。
ハリルホジッチはここにメスを入れようとした。
「現代サッカーでは得点の33%がFKから入ると言われているが、(日本は)ここ数年の統計でほとんど入っていない。改善の必要がある」
初陣となった3月の親善試合は藤春廣輝や香川真司、柴崎岳ら新しいキッカーの発掘に積極的で、本田依存からの脱却をにおわせた。
ならば、結果を残すのみ。
6月のシンガポール戦。ゴールほぼ正面の絶好の位置で、ボールの前に立っていたのが本田だった。左足で蹴り上げたスピードに乗ったボールは惜しくもバーに当たった。「惜しい」ではリアリストの指揮官を納得させることはできなかった。