サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
妥当な結果でも、大勝はやはり爽快。
アフガン戦の6点を生んだ“揺さぶり”。
posted2015/09/09 11:25
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
結果は驚きではない。これぐらいの大差は当然だ。6-0で勝利した9月8日のアフガニスタン戦である。
イランの首都テヘラン郊外のアザディスタジアムには、アフガニスタンのサポーターが押し寄せた。8650人の観衆に占める日本人サポーターは、圧倒的な少数だった。
とはいえ、アザディスタジアムは12万人以上を呑み込んだこともある巨大な空間だ。両国にとっての中立地が、日本にとってのアウェイとなったわけではない。耳障りなチアホーンを吹くばかりの観衆は、日本がゴールを奪うたびに意気消沈していった。スコアが5-0になると、席を立つ人が目につくようになった。
FIFAランキング130位のアフガニスタンには、ドイツの下部リーグでプレーしている選手が多い。ブンデスリーガ2部ではなく、さらに下のカテゴリーである。
一方の日本は、ブンデスリーガのクラブに在籍する長谷部誠、香川真司、酒井宏樹、原口元気の4人を含めて、先発の8人が欧州のトップリーグを主戦場としている。言ってみればこの日のアウェーゲームは、天皇杯の1、2回戦に見られるような力関係だった。日本がJ1のクラブで、アフガニスタンがアマチュアチームである。
ジャイアントキリングを引き起こされてしまうリスクを、日本は開始10分の先制点で取り除いた。鋭い反転から振り抜かれた香川の右足シュートが、ゴールネットに突き刺さった。
変化した、攻撃の優先順位。
5日前のカンボジア戦からの変化は、攻撃の優先順位にあった。2列目の左サイドでスタメンに起用された原口へ、最終ラインからサイドチェンジのパスが供給されていく。右サイドで高い位置を取ったサイドバックの酒井宏にも、中盤を飛ばしたロングフィードが送り込まれる。
ショートパスに固執しない攻めは割り切りを感じさせたが、実効性のある崩しとなっていたのは間違いない。アフガニスタンはカンボジアのような5バックではなかったので、サイドへのロングフィードが通りやすいところもあっただろう。
ミドルシュートも効果的だった。埼玉スタジアムではため息をもたらした中距離の一撃が、この日は決定機を生み出す。ミドルシュートで相手を引き出すことで、攻撃のバリエーションが豊富になっていく。35分にはショートコーナーの流れからゴール前に残っていた森重真人が、本田圭佑の泥臭いアシストでネットを揺らす。