プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「最善を尽くす」采配に批判が殺到!?
巨人・原監督の視線の先には――。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/09/04 10:40
2006年から始まった第2次政権も10年目(通算12年目)を迎えた。Aクラス10回と実績十分の“名将”も、今季は首位阪神に1ゲーム差の3位(9月2日現在)と苦しい戦いが続いている。
「できることをしないで手遅れになるのは最悪」
長いこと原監督の野球を見てきて、その根底に感じるのはベンチの責任ということだ。
得点圏に走者を送ってあとはタイムリーが出るのを待つというよりは、いかに無死、1死で走者を三塁まで進めるか。その走者をいかにホームまで還すか。そこで測られるのがベンチワークであり、それが監督の仕事だという考えである。
特に去年から今年にかけては、とにかく打てない、なかなか点が取れないというチームの現実がある。もちろんグラウンドでプレーするのは選手である。試合では選手たちに託さなければならない場面がほとんどだ。だから、そこで役割を果たせなかった主軸打者やミスを犯した選手には厳しい言葉をかけることもある。
ただ逆に、ベンチが動けるのに、それを端から放棄することもない。とにかく二塁に走者を送っておいて、あとは「慎之助に託したけどダメでした」、「あそこで長野が、坂本が打っていれば勝てました」ということはしない。田口のスクイズも同じだった。原監督がよく使う「最善」という言葉には、そういう意味が込められているのである。
「できることをしないで手遅れになるというのは最悪だと思っている。開幕直後であろうと、シーズン終盤であろうと、もちろん戦い方は変わってくるけど、できる手をきちっと打つというベンチワークに変わりはない。それは監督の使命だからね」
この考えを根底に原監督の采配、戦略を検証すると、大体のことは意図が見えてくるのである。
常に勝つことを求められる、巨人監督の宿痾。
そして監督のこうした考えの背景にあるのは、やはり常に勝つことを求められる、巨人の監督の宿痾とでもいうべきものがある。
これだけ実績を残している原監督ですら、今季で契約が切れるとなると「続投要請するかどうかは成績次第」と白石興二郎オーナーが公言するチームである。
原監督が続投するかしないかは別に、9年で6度の優勝を果たし、3連覇も達成した監督でも、たった1年の成績でしか評価されない。例えば日本ハムやソフトバンクが最下位に転落したときには監督の交代はなかったし、今年の中日もおそらく谷繁元信監督は続投だろう。だが巨人は、勝てなければファンも変化を求め、新しい風を求める。結果を厳しく問われる。それが巨人の監督の宿痾なのである(阪神の監督にもそういう傾向は大いにあるが……)。