野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
横浜ファンが作ったデスマッチ団体。
FREEDOMSの夢は“聖地”ハマスタ。
posted2015/09/06 10:40
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by
Hidenobu Murase
男の意地と意地。魂と魂を削り合う音がした。
束になった蛍光灯が脳天を叩き割り、額から鮮血が飛び散った。
剃刀やノコギリが刃を光らせる十字架のボードに身体を叩きつけられ、ガラスの塊が宙を舞う。
そうかと思えば、キャンバスにばらまかれた画鋲の上に、男気を見せるとばかりに自ら体を叩きつける。キャンバスはめくれ、高所からダイブし、奈落へ落ちていく。さらにルアーだ! 剣山だ! サボテンだ! 次々と現れるアイテムが全身を切り刻み、破片を肉体に喰い込ませながら血まみれの男が雄叫びを上げると、ホールの観客から悲鳴にも似た声にならない歓声が湧いた。
次の瞬間に何が起こるのか、いや現時点で何が起こっているのかすらわからない。ただ、これまでに感じたことのない、どうしようもない衝動に魂が突き動かされ、気が付いた時には、声は涸れ、涙を流していた。
これが、デスマッチなのか――。
はじめての衝撃に打ち震えたまま、彼の元へ向かう。激闘を勝利で終えた男は、息も絶え絶え、全身から血を滴らせたまま口を開いた。
「ハァハァ……それで、今日ベイスターズは勝ったんですか?」
……この人は、血を流しながら何を言っているのだろうか。
ベイの勝敗よりその死闘が……。
横浜DeNAベイスターズは今日も負けていた。「前半戦、首位で折り返し」、「17年ぶりの優勝へ」なんてのは遠い昔の物語。後半戦に入るなり、垂直落下式DeNAとでもいう勢いで、浮かれていた脳天を粉砕。開幕のヘルメットはこのために配られたんじゃないかと疑いたくもなる失速ぶりで最下位争いに甘んじるようになった今、ベイの勝敗なんかより、その死闘が……。
「いやいやいや……負けたんですね。チクショー」
男は悔しがっていた。額から血をぴゅうと出しながら。