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「最善を尽くす」采配に批判が殺到!?
巨人・原監督の視線の先には――。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/09/04 10:40

「最善を尽くす」采配に批判が殺到!?巨人・原監督の視線の先には――。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2006年から始まった第2次政権も10年目(通算12年目)を迎えた。Aクラス10回と実績十分の“名将”も、今季は首位阪神に1ゲーム差の3位(9月2日現在)と苦しい戦いが続いている。

田口にスリーバントスクイズを命じた作戦の失敗。

 筆者が疑問に思った采配は、8月23日の広島戦(マツダスタジアム)でのスクイズだ。2回1死一、三塁で、カウント2ボール2ストライクから田口麗斗にスリーバントスクイズを命じて失敗、三塁走者のレスリー・アンダーソンも憤死した作戦だった。

 田口は過去にも送りバントを失敗するなど、バントの技術が高い選手とは言えない。三塁走者のアンダーソンも機転の利いた走塁ができるほどの技術はない。田口が三振しても、次は1番に返って当たっている立岡宗一郎外野手に打順は回る。

 状況を考えれば、あえて田口にスリーバントスクイズを命じるのはリスキーではないか、と思うからだ。逆に言えば、だからあの場面では広島ベンチもスクイズは予想していなかったはずである。ただ1つ、この作戦を決行する理由として考えられるのは、奇襲としてバントさえ転がせれば成功の確率は高かったということだが……。

 そこで後日、このサインの意図を監督自身に直接確認した。

「やはり奇襲ということであの作戦を選択したんですか?」

 この問いに、原監督は大きく頭を振って、こう断言した。

「奇襲? 全然、奇襲なんかじゃないよ。オレの中では極めて当たり前の作戦だと思っている」

「そっちの方がベンチとしては、最善を尽くしていない」

 監督はこう説明する。

「1点を先行されて、相手投手は黒田(博樹)。田口の調子も悪くなかった。僅差の試合になるのは目に見えているから、ベンチとして考えるのは、まず追いつくこと。そこでカウントが2-2になった。相手バッテリーが無警戒で絶対にストライクを投げてくるカウントを作ったというのが、決断の理由だよ。あの場面で選択する作戦としては、勇気は要るけど、スクイズは極めてオーソドックスな作戦だと思っている」

 田口がバントは下手で、アンダーソンの走塁もうまくない危険性と次打者が当たっている立岡という要素はどう考えるのか。

「2度や3度、バントを失敗したからといって、もう田口にバントのサインを出さないわけにはいかない。アンダーソンの走塁だって、あの場面はそれほど難しい要求はない。1点を取る最善を選択したということでしょう。

 それじゃあ田口がアウトになって、あとは『立岡、頼む!』と託すという考えもあるかもしれない。でも、それで立岡が打てなかったら『ごめんなさい』というのか。そっちの方がベンチとしては、最善を尽くしていないとオレは思う」

【次ページ】 「できることをしないで手遅れになるのは最悪」

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