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日本が失った“アジアNo.1”の座。
男子4×100mに何が起こったのか。
text by
宝田将志Shoji Takarada
photograph byAFLO
posted2015/08/30 11:45
強化を実らせ、世界の舞台でアジア記録を更新したうえに銀メダルを獲得して見せた中国チーム。日本も、自国開催の五輪で会場中を歓喜の渦に巻き込むことができるだろうか。
予選の組分けは恵まれたが、急造オーダーでは……。
エース格の高瀬慧(富士通)が26日の200m準決勝後に右太もも内側を痛めたことが判明し、欠場が決まった。リレーの走順は急遽、高瀬を予定していた1走に大瀬戸一馬(法大)を3走から回し、代わりの3走に長田拓也(同)を充てた。つまり大瀬戸―藤光謙司(ゼンリン)―長田―谷口耕太郎(中大)のオーダーとなった。
米国、英国、ブラジルなどと同じ予選1組に入った日本。ジャマイカ、カナダ、フランス、中国らが入った2組目より「恵まれているのでは」との見方が関係者の間では強かった。
しかし、3、4走のバトンが乱れて38秒60の4着。自動的に決勝に進める3着に100分の3秒及ばず、タイムでも拾われることなく大会から姿を消した。
日本がアンダーハンドパスを導入した2001年以降、世界選手権と五輪で決勝に進めなかったのは過去、'11年大邱世界陸上のみ。入賞の常連種目としては厳しい結果となったと言わざるを得ない。
ベストメンバーが組めない事態が続いている。
直接の敗因を問われれば、バトンのミスということになるのだろう。だが、高瀬の故障で急に走順を組み替えた時点で、ミスが起こるリスクは高まっていたと見るべきだ。
苅部俊二コーチによると、当初はレース3日前の26日夜にミーティングを開いて走順を決める予定だったが、高瀬の回復具合をもう1日見極めるため、そのミーティングをキャンセル。走順が決まったのは翌27日の夜で、選手らに正式に伝達されたのはレース前日の28日の朝だった。
怪我が起こるのは致し方ない部分がある。誰もしたくてしている訳ではない。ただ、新たな走順での練習が前日と当日の朝だけでは、「バトンパスの準備としては、だいぶ足らない」(藤光)のは明らかだ。
気がかりなのは、日本が'13年モスクワ世界陸上、'14年仁川アジア大会、そして今回と、故障者が出てベストメンバーが組めなかったり、大会に入ってから走順を変更せざるを得ない事態が続いている点だ。