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<夏の甲子園 記憶に残る名勝負>
斎藤佑樹、栄光の1年前の挫折。
posted2015/07/31 16:30
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Hideki Sugiyama
7月26日、早稲田実業は鮮やかな逆転劇で西東京大会を制し、甲子園への切符を手にした。
「今までやってきた大会の中で、一番苦しかったです。100年前の先輩たちに、この後輩たちを見せたい」
決勝の試合後のインタビューでこう語り、感極まった和泉実監督。高校野球100周年を記念した今年の甲子園大会ではOBの王貞治氏が始球式を務め、第1回出場校として復刻ユニフォームでの入場行進も予定されていた。清宮幸太郎という、全国が注目するスター選手を預かること以外にも、言外に周囲からのプレッシャーはあったのだろう。
「11点も取ってコールド負けしたのは初めてだよ」
また、準決勝で優勝候補の日大三を完封で下した試合以外は、打って打たれての打撃戦。実際今年の春季大会では、東東京大会を勝ち抜いた関東一に11対18というスコアで7回コールド負けを喫している。和泉監督も7月の中旬、「清宮が打つとかそういう問題じゃない。何点取られるか分からないんだから。俺だって長年やっているけど、11点も取ってコールド負けしたのは初めてだよ」と半ばあきれ気味に話していた。
それでも、切符をもぎとった。
投手陣の不安は、今も解消されているわけではない。
しかし、チームは春季大会の苦い経験を力に変え、結果に結びつけた。
伝統校の力というのは、きっとこういうところにも現われるのだろう。
早稲田実業といえば、誰もが覚えている試合がある。2006年夏の大会決勝、田中将大を擁し、夏3連覇を狙っていた駒大苫小牧との、延長再試合を含む激戦だ。
実はこの試合、Number883号で実施されたアンケート「夏の甲子園 記憶に残る名勝負ベスト100」で、堂々の第1位に輝いた「名勝負中の名勝負」である。
そしてこの試合の主役は、青いハンカチで汗を拭いながら、涼しい顔で大会史上最多の948球を投げ抜いた、早実のエース、斎藤佑樹だった。
神宮球場で早実ナインが歓喜に沸いていたころ、斎藤はイースタンリーグの試合が行われているロッテ浦和球場で先発登板に臨んでいた。
試合後、後輩たちの快挙について斎藤はこう語った。