月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
プチ鹿島が眺める7月の新聞世相。
セ界は見たこともない時代に突入!
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/07/26 10:40
交流戦から絶望の12連敗を喫したDeNA中畑清監督だが、それでも首位とほとんどゲーム差のない状態につけている。その事実が、セの迷走を象徴しているといえるだろう。
スポーツ報知が見せた書き手のユーモア。
いっぽう、首位なのに貯金がゼロになった巨人。この事態を受けてスポーツ報知のコラム「Gペン」はこう書いた。
≪やむを得ない。現代の日本社会に目を向ければ、貯蓄率の低下は問題点の一つ。いやもともと、「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」と言われたほどで、国民が預金にいそしむようになったのは戦後の高度経済成長期、政府や銀行による一大キャンペーンの成果とされる。≫
そして、高度経済成長期の池田勇人首相による所得倍増計画にならい、ルーキー・高木「勇人」で所得倍増をとGペンは書く。もうなんだかわからないが面白い。混迷の時代は書き手の腕の見せどころだ。
7月に入ると、遂にこのときがやってきた。
「キヨシサヨナラ!!史上初セ全て借金」(スポーツ報知・7月4日)
「セ界大恐慌 全球団借金」、「阪神逆転サヨナラ負けでついに“デフォルト”」(スポーツニッポン・同)
全球団借金……。デフォルトというのは、この時期全世界が注目していたギリシャのデフォルトに引っかけた見出しである。その件にあわせて「セ界大恐慌」と書いてみせるのがスポーツ新聞の醍醐味。あなたの会社や周囲にも、きっと同じようなことを言っていたおじさんがいたはず。
各球団の担当記者が勝ちきれない理由を分析。
このセ・リーグの異常事態は、7月末の現在も続いている。7月22日の日刊スポーツは「再び全チームが借金 担当記者が混セ分析」という特集記事を載せていた。
この混戦は交流戦でパ・リーグに大きく負け越したことが直接的な理由だが、交流戦を終えても各球団ともに決め手を欠き、抜け出せない。その理由はなんなのか? 記事で区分けされた「型」は以下の通りだ。
「ベテラン偏重・貧打型」が巨人と阪神。「勢い重視型」がヤクルト、横浜、広島。「若手登用型」が中日。
「打線の軸が定まらない」(巨人担当)、「主力が去年よりちょっとずつ悪くなっている」(阪神担当)、「打線任せが続く」(横浜担当)、「先発がゲームを作れず、大きな連勝ができない」(ヤクルト担当)、「野手が若く、ときに攻撃が淡泊となり接戦に弱い」(広島担当)、「最下位が五分で戦える事実が、今のセを象徴している。若手に切り替えて徐々に状態が上がってきている。後半戦は面白いのでは」(中日担当)。
なんだか、最下位の中日がいちばん元気で夢があるコメントではないか。各担当記者の分析が参考になる特集だった。