マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
誰も知らない高校球児ベストナイン。
日本中の“無名の才能”はこいつだ!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAkira Osakabe
posted2015/07/11 10:40
2004年、2005年の夏を連覇し、2006年も決勝まで進出するなど一時代を築いた駒大苫小牧。2009年からは2004年優勝時の主将、佐々木孝介が監督を務めている。
最後の1人はライト、群馬の杉本京平だ!
さあ、「誰も知らない高校球児ベストナイン」、フィナーレの最後の1人。
ライトには、自信を持って、群馬の中央中等教育学校・杉本京平(3年・172cm70kg・左投左打)を挙げよう。
高校野球では、まだ耳慣れない学校だろう。以前は「群馬県立中央高校」という校名で、夏の甲子園にも出場している。
前橋高の投手としてセンバツで完全試合を記録した松本稔氏が、監督としてチームを率いる。県下1、2といわれる進学校と聞く。
去年の今ごろまでは「左利きの三塁手」だったこの杉本京平選手。右手にはめたグラブで三遊間をバックハンドでさばき、三塁線はそのまま地面を掃くようにして猛打球を吸収して、そりゃあ上手かった。今はセンターを守って、もっと上手い。
何が上手いといって、とっさにとんでもないプレーをやってのける。その自在性だ。
あわや左中間突破か! の飛球を飛びつくように捕球すると、そのまま地面を蹴って時計回りで体をターンさせながら、サイドハンドでバックホームだ。そんな“ヤマカン”の返球が伸びて、伸びて、あらら、あららと見ていると、ワンバウンドで捕手のミットにピタリと返ってきた。
タッチアップで本塁に突っ込んだ三塁走者をホーム目前で刺した。
杉本京平のすごさは、アドリブが効くすごさだ。
彼が懸命につとめてきた「左利きの三塁手」。それには教科書がない。セオリーもない。すべてのプレーが、まさにアドリブだった。
なんのタブーもないフィールディングのメカニズムを、知らず知らずのうちに彼は身につけていた。そう考えると、私の中で妙に“つじつま”が合う。
今は誰も知らない彼らは、数年後、誰もが知る選手になっているはずだ。あとは、実際のプレーをどうぞご覧あれ。