マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
誰も知らない高校球児ベストナイン。
日本中の“無名の才能”はこいつだ!
posted2015/07/11 10:40
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Akira Osakabe
7月に入って、すでに一部の都道府県では早くも甲子園予選の火ぶたが切られている。
今月の半ばからは全国で“予選たけなわ”に及び、その中で、毎年、あまり話題に上がっていなかった選手が何人もヒーローとして飛び出してくる。
それを先取りとまでは言わないが、ここまでほとんどメディアの話題にのぼっていない選手たちの中にも、多くのヒーロー候補が潜在していることをお伝えしてみたい。
そう言う私自身が作っている野球雑誌『野球人』(第5巻・7月15日発売)の「高校球児最強名鑑」、「注目球児リスト」に挙げた中からも、何人かの選手をここに推挙している。
先輩他誌はほぼノーマーク。挙げられた本人が「ええーっ!」といちばんビックリするような、そんな無名中の無名ばかりだ。
投手は東京の……と言ったって誰も知らないだろう。
投手からいこう。
東京の岩倉高でプレーする巽大介(3年・183cm79kg・左投左打)と言ったって、誰も知らないだろう。春の都大会は「背番号14」で投げていた。
身長体重の数字そのままの均整抜群のユニフォーム姿と、ドッシリと踏み込んで豪快なタテの腕の振りからのクロスファイアー。それだけ見れば、東洋大の無敵のエースとして投げていた頃の藤岡貴裕(現・千葉ロッテ)が重なって見える。
ならば、なぜ「14番」なのか?
立ち上がり、もしくはリリーフした代わりばなにコントロールが高低でバラつく。緊張なのか、それとも自信の無さから来る“得体の知れない不安感”なのか。
しかし、いったんきっかけをつかんで指にかかり始めたクロスファイアーは、ストライクゾーンでも右打者を飛びのかせるほどの威力。タテのスライダーの激しい変化も十分に空振りの三振が奪える球威だ。
数字にすれば、140キロ前半は出ているだろう。左中間方向へ痛烈に弾き返せるバッティングと、送りバントや進塁時に見せる走りにも高い身体能力を隠し持っていて、その潜在能力の大きさに私は賭けている。
千葉ロッテ・藤岡貴裕だって、高校時は誰も知らない左腕だった。