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川崎には圧勝でも、ブンデスでは?
ドルトムントが抱える“3つの懸念”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/07/09 10:50
自ら2得点を決め、トゥヘル新監督に絶賛された香川真司。今季は、リーグ7位に終わった昨季の雪辱に燃えているはずだ。
選手獲得の資金回収もあってのアジアツアーだった?
また昨冬に加入しながら、シーズン終盤にはほとんど戦力とならなかったカンプルもチームに残ったままで、このポジションにはドルトムントのユース上がりで昨シーズンはマインツにレンタル移籍していたホフマンも戻ってくる。
昨シーズンも移籍市場で失敗していたが、今シーズンもGK以外のポジションではマネージメントが上手くいっているとは言えない。不必要な選手獲得のために資金を投じてしまい、その資金を回収することとアジアツアーも無縁ではない。昨シーズン開幕前から続くチームマネージメントの失敗は、トゥヘルよりもツォルクSDの責任が大きいわけだが、負の連鎖からドルトムントが脱しきれていないのは事実だ。そうした状況のなかに飛び込む難しさともトゥヘルは直面していくことになる。
トゥヘルのスタイルで“チームの限界”を打ち破れるか。
そして、最大のテーマとなるのが、トゥヘルがどのようなサッカーを目指すのかについてだ。新監督はこのように話している。
「ドルトムントではボールポゼッションは素早く相手ゴールに迫るためのものであり、それは変わらない。私は攻撃的なサッカーが好きだが、ファンもまた楽しめるサッカーを期待しているはずだ」
新シーズン開幕に向けた準備期間がそれほどないことを考えても、クロップのサッカーに少しのスパイスを加えるくらいしか望めないのかもしれない。
しかし、そこに光明はある。
昨シーズン、“ドルトムントの限界”は大きく分けて2つの局面で見て取れた。
1つ目が、ドルトムントよりも力が劣ると見られているチームとの対戦だった。昨シーズンのリーグ戦では、対戦するチームの多くがドルトムント対策と称して、守りを固めてカウンター狙いに徹してきた。それを崩せず、前がかりになったところでカウンターから失点して、敗れるケースが目立っていた。
2つ目が、バイエルンやCLで対戦したユベントスのように、ドルトムントよりも力のあるチームとの対戦で、思うように力を発揮できなかったことだ。バイエルンにはドイツ杯準決勝でPK戦の末に勝ったものの、試合内容では圧倒されていた。またリーグ戦での2度の直接対決でもそうだった。第10節のアウェーゲームでの前半以外は、弱者の戦いに徹しながらも効果的な攻撃は見せられなかった。そしてCLでのユベントス戦ではファーストレグ、セカンドレグともに全く歯が立たなかった。