野球クロスロードBACK NUMBER
巨人に3連勝した工藤采配の“妙”。
原監督も唸る「戦う前の圧力」とは。
posted2015/06/08 11:40
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
開幕からソフトバンク打線が猛威を振るっている……。どうやら、そんなイメージが定着しているようである。
おそらく、今季から本拠地・ヤフオクドームに新設された観客席「ホームランテラス」の影響が少なくないだろう。
それは昔の甲子園球場で言うラッキーゾーンのようなものだ。従来のフェンスとグラウンドの間に仕切りを設けたことで最大で5メートル狭くなり、フェンスの高さも5.8メートルから4.2メートルまで低くなった。
それなら本塁打だって出やすいだろう――と思う人が増えても仕方がない。
確かに、現在パ・リーグ首位のソフトバンク打線は安定してアーチを生産できてはいる。しかし、本塁打数は西武と同じ59本塁打、打率もロッテとわずか1厘差の2割6分9厘(成績等は全て6月7日現在)と、どちらも12球団トップの成績ではあるものの、実際には周囲が騒ぐほど突出した数字を残しているわけではない。
ソフトバンクの強さ。それを合理的に説明すれば、多彩な“攻め”になるだろうか。
巨人との3連戦で顕著だった“工藤采配の妙”。
先の巨人との3連戦がとりわけ顕著だった。
6月5日の初戦は、育成枠から支配下登録された細山田武史が2点タイムリーを放つなど8得点で快勝。翌日の試合では、2点リードの8回裏、2死一、二塁からアンダーソンが放った右中間への長打を処理した柳田悠岐の送球を、セカンドの川島慶三が絶妙なポジショニングで中継。同点の走者を本塁に還さず、試合も3-2で接戦をものにした。
細山田、川島。控え選手たちの奮起、彼らを積極的にスタメン起用する工藤公康監督の采配があってこその勝利だった。
第3戦も、3年目の高田知季が4回にプロ初本塁打となる先制2ランを放った。この場面は、ベンチの明確な攻めのプランが一発を呼び込んだといってもいい。
両軍無得点。状況は4回表、1死一塁で打順は7番の高田である。送りバントで得点圏に走者を進めたとしても、続く打者は8番。相手のホームのため、DH制はなく9番打者が投手という流れを考慮すれば、先制できる確率は高くはない。
そこでベンチが選んだのが、ヒットエンドランだった。