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「安く買って高く売る」を極限まで。
セビージャの“ミダス王”モンチ。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byMarca Media/AFLO

posted2015/04/23 10:30

「安く買って高く売る」を極限まで。セビージャの“ミダス王”モンチ。<Number Web> photograph by Marca Media/AFLO

ウナイ・エメリ監督(右)と名物SD“モンチ”の信頼関係がセビージャ独自の補強計画を可能にしている。

今季もまた、主力が多額の移籍金を残して去った。

 だがエメリは、この苦境を柔軟な対応で乗り越えた。それまでこだわっていたラキティッチのボランチ起用とポゼッションスタイルを捨て、中盤を厚くした堅守速攻スタイルへの転換を決断したのである。これをきっかけにチームは急激に結果を出しはじめ、最終的にリーガを5位で終えただけでなく、数々の接戦を制してヨーロッパリーグ優勝まで果たした。

 エメリに3シーズン目の指揮が任された今季も、例年通りラキティッチやファシオ、モレノら数人の主力が多額の移籍金を残してチームを去った。

 だがその穴は、モンチならではの渋い人選、そしてエメリのユニークな起用法で補っている。前者はティモシー・コロジエチャク、ブノワ・トレムリナスら “掘り出し物”たちの補強、後者はエベル・バネガとビセンテ・イボーラの入れ替え起用だ。

攻守で選手の位置を入れ替える、という策。

 当初は新加入のデニス・スアレスをトップ下に起用してラキティッチの代役を任せたが、1部初挑戦の21歳に、攻守の要だった元キャプテンの代役は重責すぎた。しかしもう一人の司令塔候補であるエベル・バネガはトップ下で使うには得点力が物足りず、ボランチで使うには守備力がなさすぎる。

 そこでエメリが考えたのは、攻撃時と守備時でバネガとイボーラのポジションを入れ替えることだ。

 マイボール時はバネガがボランチの位置からゲームを組み立て、守備時はイボーラが本職のボランチに戻ってハードワークする。これならビルドアップの起点となるバネガを中盤で起用しながら、守備面のリスクもケアすることが可能となる。

 しかも空中戦に滅法強いイボーラがかつてのフレデリック・カヌーテのようなターゲット役をこなすことで、前線にハイボールを入れてセカンドボールを拾って押し込むという新たな攻撃オプションも加わった。これまで速攻とセットプレーを主な得点源としてきたセビージャだが、エメリのアイデアによってますます嫌らしいチームとなった感がある。

【次ページ】 「出て行く日には、成功を生むシステムを残したい」

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