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バイエルンが目覚めた“暴力性”。
「バルサの亜流」を超える時が来た。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2015/04/22 16:30

バイエルンが目覚めた“暴力性”。「バルサの亜流」を超える時が来た。<Number Web> photograph by AFLO

昨年はCL準決勝でレアル・マドリーに2戦合計0-5で大敗したバイエルン。グアルディオラ体制2年目、リーグも独走状態で、全ての力をCLにつぎ込んで優勝を狙っている。

これまでは使わなかったロングパスを何度も指示。

 斜め方向のロングパスの多さも、相手を欺くのに一役買った。

 これまでグアルディオラは、ゴロのショートパスを好んできた。浮き球のパスは相手にカットされる可能性が高いからだ。もちろん禁止していたわけではないが、ロングパスを奨励することはこれまでなかった。

 ところが、ポルトとの第2レグにおいて、グアルディオラは何度もジェスチャーで「対角線のロングパス」を指示したのである。

 センターバックのボアテンクとバドシュトゥバーは、相手のプレスがかかりそうになると、迷わず斜めにボールを送り込む。ポルトの選手たちは第1レグのように激しいプレスをかけようとするも、頭の上をボールが通過するため、追いたくても追えない状態に陥った。これこそグアルディオラが狙っていたことだろう。

 今季のCLのグループステージで、バイエルンのパス成功本数は1試合平均654本で32チーム中最多だったが、ポルトとの第2レグでは418本に激減した。

大勝の要因は、バイエルンの野性味。

 ただしこの日の最大の勝因は、こういう戦術の取り組みではない。何よりも注目すべきは、冒頭で書いたプレーの暴力性だ。

 ボールを失えば後ろからでも構わず体当たりをかまし、イエローカード覚悟でスライディングをあびせる。まるで全員がオリバー・カーンになったかのような荒々しさだった。

 身体能力に優れた選手たちがケンカを仕掛け、なおかつ技術、センス、戦術で圧倒する。バイエルンの野性味とペップの頭脳が融合した、異次元のパワーフットボールだ。

 前半だけで5-0となったのも、ある意味、当然だった。

 1点目はラフィーニャの対角線のパスをゲッツェが落とし、ベルナトのクロスをチアゴが頭で合わせた。2点目はショートコーナーからバッドシュトゥーバーが折り返し、ボアテンクが技ありのヘディング。そして3点目はラームのクロスをミュラーがダイレクトで流し、レバンドフスキが頭で押し込んだ。つまり最初の3点はすべてヘディングゴールだったのだ。

【次ページ】 “バルサの亜流”から抜け出すヒントは得られた。

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