セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
本田圭佑がファンにギリギリの苦言。
苛烈なブーイングより愛情の叱咤を。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/02/16 12:15
厳しい表情でスタンドに視線を送る本田圭佑。本田が感情を露にして話すことは決して多くない。ミランを取り巻く環境がそれほど厳しい、ということだろうか。
インザーギが大人のチームを率いるのは初めてのこと。
指導歴わずか3年目のインザーギにとって、今季は監督としてのセリエAデビューイヤーであるだけでなく、大人のチームを率いるのも初めての経験だ。
同じセリエAデビュー監督ながら、'90年代からアマリーグの地方クラブで叩き上げてきた56歳のエンポリ監督サッリは「うちの選手たちは、皆若いが一つにまとまっている」と、前半戦カードに続く勝ち点1奪取に胸を張った。
インザーギは、遠のくEL出場権に「今順位を見てもしょうがない。一戦ごとに勝利を目指すことが重要だ」と言葉を濁したが、身にまとう悲壮感は濃い。
本田がファンに対して発した苦言と「俺」という一人称。
「もうちょっと皆が前を向いてやれば、流れが一気に好転する可能性は感じる」
ミックスゾーンで立ち止まった本田は、努めてポジティブな言葉を発しようとした。しかし、攻撃に関する質問に応えながら、いつしか同じことを繰り返して熱弁した。
「今のファンは痺れを切らしてしまって、罵声に近いところもある。本当の愛情の叱咤ではない、と感じる部分はある。(苛烈なブーイングによって)選手がやる気になるのならどんどんやればいい。けれど、それで選手が自信をなくしてしまって、ボールをつなげる場面でもロングキックに頼って、相手にまた簡単に拾われてしまったら意味がない」
本田は、はっと息を吐いて挑発的な言葉を並べた。
「僕が知りたいのは、ミランの全盛期のファンは、あまりよくない時間帯にどういうリアクションをしていたのか、ということ。(ブーイングに晒される中で)後ろ(のDFたち)が何のためらいもなく、ゆっくりとつないでいたのであれば、全盛期の選手たちのメンタリティは凄いと思う」
そして「今と昔のファンのアクションは絶対ちがう、と俺は思っている」と続けた。メディア向けの対応では「僕」という一人称を貫く本田が、そのフレーズだけ「俺」と漏らした。本音だろうと思った。
「一致団結しないといけないと思う。ミランを勝たせたい、ミランを再建したい、という気持ちは皆いっしょでしょ」