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本田圭佑がファンにギリギリの苦言。
苛烈なブーイングより愛情の叱咤を。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2015/02/16 12:15

本田圭佑がファンにギリギリの苦言。苛烈なブーイングより愛情の叱咤を。<Number Web> photograph by AFLO

厳しい表情でスタンドに視線を送る本田圭佑。本田が感情を露にして話すことは決して多くない。ミランを取り巻く環境がそれほど厳しい、ということだろうか。

88分にミランは9人となり、耐えるのが精一杯に。

 押し気味に試合を進めていたエンポリの一瞬の隙をついたのは、FWデストロだった。40分、MFボナベントゥラの放った低い左クロスに飛び込むと、右足で押し込んで先制点を奪った。彼には、“偽”ではなく、本物の9番としての働きが期待されている。

 後半に入り、徐々に本田もリズムを取り戻していく。55分のボール奪取から流れるように、FWメネズやMFボナベントゥラと小気味よくパスを繋いで敵陣へ迫った。

 ただし、後半に入っても圧倒的に攻撃の形を作っていたのはエンポリの方だった。68分、DFヒサイの放った縦のクロスをFWマッカローネが頭で叩きつけ、同点。ホームの観衆がミランの選手たちへ向けたブーイングは、鋭さもボリュームも増すばかりだった。

 79分、FWチェルチと交代する形で本田はグラウンドを後にした。ブーイングを受ける背中にはグラウンドコートがかけられ、本田は大股でベンチへ歩いていった。

 その後もミランの混乱は続いた。

 83分、エンポリFWタバーノのループシュートを防ごうとしたGKディエゴ・ロペスが、PA外でハンドの反則をとられ一発退場に。88分には、CBパレッタが左太もも裏の筋肉を痛め、プレー続行が不可能になった。

 ミランは、一気呵成に勢いづくエンポリを相手に、ロスタイム3分を含む残り時間を9人で耐えざるをえなかった。タイムアップの笛が鳴ったとき、勝ち点1を拾ったのはミランの方だった。

限界が見えてきたインザーギの手腕。

 冷え切った観客席から、容赦のない怒声が降り注いだ。インザーギと選手たちへ降り注いだブーイングは、1分近く止むことはなかった。

 残留争いが目標の相手に勝ち点3を取れず、互角以上の戦いをされた指揮官インザーギは、試合後「エンポリ相手に苦戦することはわかっていた。うちは新戦術にして2週間、向こうは(同じ監督、ほぼ同じ選手構成で)3年間やっている」と、力なくうなだれた。

 新人監督インザーギの手腕に、綻びが見え始めている。

 多すぎる故障者に同情の余地はある。しかし、毎試合布陣や先発を変える一方で、ちぐはぐなプレーをくり返すMFムンタリや明らかなコンディション不足にあるMFデヨングの起用にこだわってきたことに同情の余地は無い。混迷を極めた1月、ロッカールームから疑問の声が上がったのも当然だ。

 起用法とコンディション判断の拙さに加え、ゲームプランの甘さも指摘される。エンポリ戦では、やはり交代策で後手を踏んだ。

【次ページ】 インザーギが大人のチームを率いるのは初めてのこと。

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