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映画『プロレスキャノンボール』で、
レスラーたちが実現した奇跡とは?
posted2015/02/08 10:40
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
プロレス団体DDTがドキュメンタリー映画を作った。タイトルは『劇場版プロレスキャノンボール2014』。プロレスラーたちがチームに分かれて車で2日間の旅をしながら、行く先々でプロレスの試合を行ない、そのポイントを競うレースに密着している。
下敷きとなっているのは、昨年、劇場公開されて話題を呼んだアダルト作品『テレクラキャノンボール』だ。「プロレス団体がAVからアイディアを持ってくるのか?」と思われるかもしれないが、決して不思議なことではない。“文化系プロレス”とも呼ばれるDDTは、ありとあらゆるエンターテインメント・カルチャーとリンクし、養分にしてきた。
DDTの人気レスラー・ポイズン澤田JULIE(2012年に引退)のモチーフは1981年公開の映画『魔界転生』の沢田研二。他にもアイドルのライブとプロレスの合体イベントを鉄工所で開催し、ロックフェスにも参戦する。最近では『ガノタプロレス関係者の集い』なるトークイベントも行なわれた。社長兼選手の高木三四郎らが、ただただガンダムの魅力を語るという「デタラメな企画」(MCの村田晴郎アナ)だったが、会場は満員になった。「DDTの人たちならガンダムのことをしゃべっても面白いに違いない」とファンは思っているのだ。
プロレスの間口を広げてきたDDTが、ついに映画に進出。
他ジャンルとのリンクでプロレスの“間口”を外へ外へと広げてきたDDTが、映画というカルチャーに狙いを定めたのは当然の流れだろう。高木いわく「ウチは自社に映像セクションがあるので、映像制作にはわりと自信があるんです」。
『プロレスキャノンボール』の総監督を務めたマッスル坂井はDDTの映像スタッフとレスラーを兼任していた才人。助監督の今成夢人も学生プロレス出身のレスラーであり、DDT映像班として中継番組や“煽りV”を制作している。映像のツボにもレスラーの生理にも精通した人間がいるから、DDTは映画製作に乗り出すことができたのだ。それは、DDTが何年も前から試合だけでなく映像のクオリティも重視してきたということでもある。
ドキュメンタリーではあるが、『プロレスキャノンボール』は何よりもまず娯楽映画だ。映画を見ている129分のうち、100分くらいは笑っていたんじゃないかという気がする。レスラーたちが旅をしながらプロレスを行ない、その内容によるポイントを競い合うもので、試合成立で5ポイント、勝てばポイント加算、「一番強かった」、「覚えてろよ」、「次の○○で勝負だ」という捨て台詞を相手に言わせたらボーナスポイントというレースのシステムがまずおかしい。