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酒井監督就任以来、初めて3位後退。
東洋は青学との差を詰められるか。
posted2015/01/12 10:30
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Hirofumi Kamaya
酒井俊幸監督が就任して以来、東洋大は箱根駅伝で優勝、2位、優勝、2位、そして前回も優勝と、競馬の世界の用語を使うなら「連対」を続けてきたが、6年目にして3位となった。
本来であれば、喜んでいい結果だと思う。しかし、レース終了後、部員、支援者を前にして来季の主将に決まった服部勇馬は、涙まじりにこう言葉を絞り出した。
「青山学院の選手のように、流れを変える走りが出来ませんでした」
東洋大のカルチャーがうかがえる瞬間である。3位は、敗北なのだ。
酒井監督は、敗因のひとつとして5区山上りについて、想定の甘さがあったことを認めた。
「誰が走ろうとも、よくて1時間18分台、力のある選手でも1時間19分台だろうと思っていました。ところが青学の神野君は1時間16分台。正直、私自身が柏原(竜二)の記録が抜かれるとは思っていませんでしたし、どの大学にクライマーが潜んでいるか分かりませんね。私の想定の甘さ、そんなに走れる選手はいないと決めつけた時点で負けでした」
箱根の指揮官には「想像力」が求められる。
ライバルと目される学校の区間配置、想定タイムを読みながら、オーダーを決めていく。今回、酒井監督は潔くその部分での負けを認めた。
「攻め」の走りができなかった理由は出雲の中止にも。
ただし、敗因はそれだけではなかったと思う。
東洋大の選手のトレードマークと言えば、柏原に代表される「攻め」の走りだ。とにかく、ガンガン前へと進み、プレッシャーをかけていく。しかし、今回、東洋大のオーダーからは「圧」が浮かび上がってこなかった。
彼らが攻めの走りが出来なかった原因はどこにあるのか? 私個人としては、10月の出雲駅伝の中止の影響が大きかったと思っている。
振り返ってみると、出雲の中止はいろいろな大学に影響を与えた。全日本、箱根の結果を見ると、おそらく出雲で優勝の可能性があったのは青山学院と明治の2校だ。
トラックのスピードランナーをそろえる明治は、三大駅伝のなかで出雲にもっともチャンスがあり、もしここで初優勝していれば、全日本、箱根とより中身の濃い駅伝が出来たはずだ。
しかし、いちばんダメージが大きかったのは東洋大だと思う。双子の設楽兄弟はじめ、前回の箱根駅伝優勝メンバーが4人抜け、経験のない選手が多い状況で、出雲は貴重な実戦の機会だったのである。