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歴史的名牝、ラストランの有馬を制す!
流れが全てジェンティルに向いた理由。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/12/29 12:00
父・ディープインパクト、母・ドナブリーニ(母の父ベルトリーニ)の血はジェンティルドンナの次世代へ。早ければ2018年にも産駒がデビュー予定だ。
ジェンティルドンナの末脚は最後まで衰えず。
向正面に入っても先頭はヴィルシーナのままだ。2馬身ほど後ろにエピファネイア、4、5馬身離れた3番手にジェンティルドンナ、その内にトーセンラーがつけ、ラキシス、ワンアンドオンリー、フェノーメノ、トゥザワールド、ラストインパクトとつづく。その外にゴールドシップ、2馬身ほど後ろからマークするようにジャスタウェイが脚を溜めている。
馬群が3コーナーに差しかかるとペースが急激に速くなった。
ヴィルシーナのリードはみるみる縮まり、4コーナーでエピファネイアがかわしにかかる。その外からジェンティルドンナがスパートをかけ、ラキシスも負けじと食い下がり、それらをまくるようにゴールドシップが大外から押し上げてきた。
直線に入ると、内埒沿いからエピファネイアが先頭に立った。そのまま抜け出すかに見えたが、ラスト200m地点でジェンティルドンナが並びかけ、2頭が激しく叩き合う。
ゴールまで10完歩ほどのところでジェンティルドンナがエピファネイアを競り落とし、体ひとつ抜け出した。外からゴールドシップ、内からトゥザワールドが猛然と追い込んでくるが、ジェンティルドンナの末脚は最後まで衰えることがなかった。
オグリキャップ、オルフェーブルらの伝説をなぞる。
勝ちタイムは2分35秒3。先述した第7レースのグッドラックハンデキャップの2分33秒8より1秒5遅かった。
言わずもがなだが、タイムが速かった7レースの勝ち馬が有馬記念に出ていたら勝っていたかというと、お話にならない結果に終わるのが競馬というものだ。不振にあえいでいたオグリキャップが引退レースを勝利で飾り「奇跡のラストラン」として伝説になっている1990年の有馬記念も、同日のグッドラックハンデより遅い勝ち時計で決着した。オグリに騎乗した武豊が「強い馬は強いんです」と言ったように、特殊な流れになっても勝ち切ることができるからこそ名馬なのである。オルフェーヴルが3歳だった2011年の有馬記念も、その日のグッドラックハンデより遅い時計で決着した。「超」のつくスローペースは「我慢を強いられる」という点で、ハイペースとは別種の厳しい流れなのである。