プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ベンゲルがついにアーセナルを去る!?
自ら招いた「内輪もめ」に終止符を。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2014/12/16 10:40
CLのグループリーグは2位で決勝トーナメント進出を決めたが、プレミア優勝は絶望的。ベンゲルの心中やいかに。
過去数シーズン、守備に目立った向上はない。
試合後のベンゲルは「甘い守備」を認めながらも、当日の最終ラインが「主力を欠いていた」ことに言及した。たしかに、正CBのローラン・コシェルニー、新右SBのマテュー・ドビュッシー、SB兼CBの第1バックアッパーであるナチョ・モンレアルが故障中だった4バックの右半分は、カラム・チェンバーズとヘクター・ベレリンのティーンエイジャー2名だった。
だが、リーダーシップを発揮すべきペア・メルテザッカーを中心にラインが統制されてさえいれば、いずれも防げない失点ではなかった。先制点を呼ぶクロスを上げさせたのは、左SBレギュラーのキーラン・ギブスだ。
更に言えば、アーセナルはチェンバーズではなくモンレアルがCBに入った10月のハル戦でも、拙い守りで2点を奪われている。落度があった守備陣はメルテザッカー、ギブス、そしてストーク戦でもボランチとして4バックに加勢する立場にあったマテュー・フラミニ。チームとして守備の是正を図る時間はあったはずだが、1カ月半を経た第15節のピッチで改善の跡は見られなかった。
ベンゲルにブーイングを浴びせたファンにすれば、過去数シーズンの間に移籍市場と練習場で改善が図られているべきだった、ということになるのだろう。
ベスト4を維持し、勇退するという引き際も。
もちろん、このままリーグ優勝の望みが消滅することになったとしても、ベンゲルが「タイトルと同等」と主張してきたトップ4の座を今季も維持する可能性は十分にある。
CL出場チームのステータスは、中核を成すべきジャック・ウィルシャーとアーロン・ラムジーの両攻撃的MFをはじめ、若手が多いチームの強化を進める上でも重要だ。
これも攻撃的スタイルの浸透と並ぶベンゲルの功績だが、黒字経営を続けてきたアーセナルには第3、第4の大物に手を出すだけの経済的体力がある。その対象は、真のトップクラスの必要性が叫ばれ続けてきたCBと守備的MFになるかもしれない。
そう、ベンゲルはCLを戦う前途有望なチームを後任の手に委ねるという、美しい引き際を演じることも可能なのだ。