リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
死者まで出たウルトラス同士の衝突。
リーガから過激派が消えない理由は?
posted2014/12/18 10:40
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
AFLO
11月30日の朝、マドリード市内でデポルティーボのサポーター1人が亡くなった。
場所はアトレティコ対デポルティーボ戦を数時間後に控えた、ビセンテ・カルデロンスタジアムの近く。原因は不慮の事故などではなくサポーター間の衝突である。
被害者はデポルティーボのサポーター集団「リアソール・ブルース」を乗せたバスでマドリードに到着した。夜通しの長旅から解放されて身体を伸ばしていると、鉄パイプやガラス瓶で武装したアトレティコのサポーター集団「フレンテ・アトレティコ」が現れ、乱闘が始まった。
その中で、彼は鉄パイプで頭部を殴られた。そして川に投げ込まれ、命を落とした(死因は頭部のケガ)。
内務省のデータによると「暴力的」とカテゴライズされたサポーターはスペイン全国に約1万人いる。彼らが属する暴力的集団は「ウルトラス」と呼ばれ、1部だけでなく下位リーグのクラブにも存在する。
だが事情に詳しいジャーナリストによると、'90年代末以降、彼らの勢いは衰退の一途を辿っている。罰則を強化したスポーツ法や、スペインの社会・経済状況の影響だという。国の機関として立ち上げられた反暴力委員会(正式名称は「スポーツにおける暴力・人種差別・外国人排斥・非寛容抑止委員会」)も毎節、各クラブが提出する入場券販売等のデータや警察の情報を分析し、試合の危険度を発表して警備に指針を与えている。
クラブも、選手や監督も彼らを敵に回したくはない。
しかし、ウルトラスはいまもって消滅していない。理由のひとつは、ホームゲームに挑む際、彼らの存在は力になると信じるクラブが庇護を与えているからだ。実際のところ、ビジターを威圧する雰囲気を作るのに、サポーターが暴力的である必要は全くないのだが……。
選手や監督も彼らを敵に回すことは避けたいと思っており、暴力反対は口にしても、ウルトラス排除を叫ぶ勇気はない。ファンのチームや選手に対する支持・不支持に関して、ウルトラスが一般サポーターに及ぼす影響は大きく、彼らに嫌われると大変なことになるからである。レアル・マドリーの「ウルトラス・スル」は国内有数の危険なグループだが、イスコやカルバハルは今年3月、彼らのマフラーを持って写真に収まり物議を醸した。