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東京選抜に揃った18人の高校球児。
東南アジア遠征は「個性」が大事。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/12/06 10:40
秋季高校野球東京大会で優勝、明治神宮大会でも準決勝まで進出した東海大菅生の2年、勝俣翔貴。注目のスラッガーは今夏より投手としての才能も開花。海外遠征でさらに成長なるか。
小技より強打が得意な選手が多く選出。
1つの学校から複数の選手を選出していないのは、できるだけ多くの学校の選手に国際大会を経験させたいという教育的配慮があるからだろう。東京都高野連のホームページには今回の選考基準が次のように紹介されている。
「国際的視野のある者を基本とし、将来的に海外事業に興味を持ち、グローバルな視点で社会的貢献を考えている者。野球というスポーツを通じ、日本に限らず、世界を視野に入れて指導者を目指す者」
教育的配慮が行き届きすぎたことにより、技術の伴わない選手が多く選出される、というのは高校ジャパンなどではよくあることだが、今回の東京選抜はいいメンバーが揃った。
最も気に入ったのは小技より強打が得意な選手が多いところで、この日大戦で記録したバントは1つだけ。壮行試合だからかもしれないが、シンガポールとミャンマー戦でバントを5つ6つ決めて勝っても「これこそが“ベースボール”の醍醐味だ」とは言いづらい。見る者もプレーする者も、「ホームランを打って楽しい、快速球を投げて楽しい」というプリミティブ(原始的)な楽しみ方に立ち帰る時期にきているのかなと思った。
試合は1点リードされた東京選抜が2回裏に3点取って序盤をリードし、日大が6、8回に1点ずつ取って3-3の引き分けという昔のプロレスのような試合だった。と言っても見応えはあった。
中軸の打者に力強さが目立った東京選抜。
日大でよかったのは3番ソン・ホキュンと4番太田和輝の2人。とくに太田は打球の強さが強烈で、将来の日大打線を背負って立つ存在だと思った。7人の投手を繰り出し、最長2イニングという落ち着きのないテスト起用で興を殺いだ。日大が東都の1部に昇格するには、投手陣の整備が課題になるだろう。
東京選抜は各打者の力強さが目立ち、とくに際立ったのが4番加藤、5番勝俣、6番中道の中軸。0-1とリードされた2回裏には加藤がセンターへ抜けようかというショートへの内野安打で出塁すると、5番勝俣が1ストライクからのストレートを狙い打ってライトのネット上部に達する特大のホームランを放ち、早くも逆転する。