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故障防止に動き出した高野連。
タイブレークは消去法の苦肉の策?
posted2014/11/18 10:40
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
AFLO
秋の高校・大学ナンバーワンを決める明治神宮大会中、神宮球場内の一室で、ある記者会見が行なわれた。
その会見は、高校野球の大会における、タイブレーク制度の導入についてのものだった。
昨春のセンバツ大会2回戦で、済美の安楽智大投手が1試合232球、大会を通じて772球を投じたのち、昨秋に右ひじ痛を発症した。
今春のセンバツでは、桐生一vs.広島新庄が延長15回に及ぶ大熱戦の末に、再試合を行なった。その試合、両チームのエースが2試合を一人で投げ抜いた。
今夏には、盛岡大付の松本裕樹投手が右ひじ靭帯の炎症がありながら2試合に登板。痛々しい姿を、観衆の目にさらした。
17、18歳の若い高校生が身体に鞭を打って投げ込む姿は、日米をまきこんでの大論争を巻き起こした。
またプロ野球においても、松坂大輔投手、和田毅投手、藤川球児投手の同級生が、1年ごとに同じ個所の故障を発症。3人はトミー・ジョン手術を受けている。
今年に入って、ヤンキースの田中将大投手が靭帯の部分断裂、レンジャーズのダルビッシュ有投手も、詳しいけがの程度は報道されていないが、おそらく軽症ではない怪我を負っているとの憶測が飛んでいる。
日本人投手を巡り、野球界は転換期に差し掛かっている。
「甲子園」を管轄する高野連が、動き出した。
先述した彼らに共通するキーワードは「甲子園」である。
それはつまり、「甲子園」を目指した日本高野連所属の選手だったということを意味している。この経緯を受けて、日本高野連が選手の肩やひじなどの健康面について議論するのは、至極当然な流れといえるだろう。
とはいえ、記者会見に参加して日本高野連の竹中雅彦事務局長の説明を聞くにつれ、腑に落ちない部分が残ったのも、また事実だった。
というのも、日本人投手の肩・ひじなどの健康に関する問題が、日本高野連という一つの団体だけで解決できるものとは思えないからだ。