セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インテルと長友佑都が陥った苦境。
問題はマッツァーリの「戦術熱」?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/10/17 10:30
長友が退場したカリアリ戦後、マッツァーリは「10人でなければ4失点はしなかった」と厳しいコメントを残した。
戦力はある。問題視されているのは、監督?
長友が出場しなかったフィオレンティーナ戦でも3失点完敗したインテルは、メディアやサポーターから猛批判を浴びた。
“いつまで3-5-2に固執するのか?”
“先制されても、まるでずぶ濡れの猫のようにビビッて反撃すらしない!”
司令塔コバチッチにはまだプレーにムラがあり、MFエルナネスもFWクローゼと組んで暴れまわっていたラツィオ時代の攻撃センスを発揮できていない。そして最も批判の対象とされているのが、監督マッツァーリの手腕だ。
移籍金40億円クラスの獲得はかなわなかったが、フロントは今夏の移籍市場でDFドドやFWオズバルド、MFメデルら上位を狙える即戦力の獲得に尽力した。戦力が足りないわけではない。
仕事人間であるマッツァーリは、戦術練習に熱を入れる。多くのパターンを教え込み、本番のゲームでも多彩な布陣変更を試みる。
フィオレンティーナ戦でも、後半に4バックへスイッチした後、前線の組み合わせを3度変えた。だが、選手たちは混乱するばかりだった。
彼らの多くは、練習場では指揮官の求める動きをトレースできても、本番で、しかもリードを奪われた展開ではパニックに陥り実践できない。初めてマッツァーリの指導を受ける者もいれば、イタリアに来たばかりの人間もいる。
インテルはもはやかつてのスター軍団ではない。
主将ラノッキアは「監督への信頼は不変だ」と言うものの、習熟度がバラバラのチームでは、時に好パフォーマンスを見せても、一過性のものになりがちだ。
選手たちは、もはやインテルがかつてのスター軍団でないことは頭でわかっていながら、名門の社会的地位も尊重せざるを得ず、トリノ相手にも点を獲れない現実とのギャップに苦しむ。今のインテルは、若手重用を謳いながら迷走した昨季のミランのようだ。
指揮官は、選手たち一人ひとりと個別面談を行い、“男なら立て!”と活を入れた。
「よく考えるんだ。このチームは必ず苦境から脱出できる」