セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インテルと長友佑都が陥った苦境。
問題はマッツァーリの「戦術熱」?
posted2014/10/17 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
エリック・トヒルには、名刺が2枚ある。
1枚は、インドネシア有数のメディアグループ総帥としてのビジネス用。
インテルのロゴが中央に入ったもう1枚は、商談の前後に添えて「会長は私なのです」と相手を驚嘆させ、心ひそかに胸を張るためのものだ。
しかし肝心のチームは、セリエA6節を終えて、二桁順位に喘いでいる。
5節カリアリ戦と6節フィオレンティーナ戦で、インテルは合計7失点を喫し、いいところなく連敗した。トヒルが激怒したのも無理はない。
フィレンツェでの敗戦後、マッツァーリ監督はいつも以上にしかめっ面だった。
「0-3で敗れた後では、何を言っても世迷言になるだけだ。チームのフィジカルコンディションの問題? いや、他にも問題はある。しかし、それを口にすることはできない」
新加入のビディッチ頼みの守備陣。
インテルが陥っている難局は、見かけよりはるかに深刻だ。
中でも、守備陣は瀬戸際に立っている。
8月下旬のELプレーオフから5試合連続完封を続けていた3バックは、シーズンが本格化する秋に入ると機能不全を起こした。
最初の綻びは、9月21日の3節パレルモ戦だった。
開始3分で許した失点は、新加入DFビディッチの凡ミスが引き起こした。プレミアリーグで9シーズンを戦った百戦錬磨のベテランCBは、まだイタリアのプレーリズムに馴染みきっていない。
とはいえ、彼にかかる戦術上の負担や周囲の期待は大きく、ビディッチ個人の調子が良くも悪くも守備陣全体の出来を左右してしまう傾向は早急に改善されるべきだ。
パレルモ戦は何とかドローに持ち込んだが、連敗した2試合も先制を許し、逆転することはかなわなかった。