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前田健太のメジャー挑戦を阻むもの。
新ポスティングに早くも「弊害」が。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2014/10/21 10:40
5年連続二桁勝利を達成し、WHIPはリーグ最高を記録した広島、不動のエース・前田健太。現在26歳、メジャーに挑戦するなら早いに越したことはないが……。
優勝が見えてきた広島が、前田放出に「待った」。
ところがここにきて事態は急転。一番の理由は球団の優勝への機運の高まりだという。
昨年、広島は初のクライマックスシリーズ進出を果たしたばかりか、第1ステージで阪神を破り、ファイナルステージへと進出を果たした。その勢いのまま臨んだ今季も、エース前田に加えてルーキーの大瀬良大地投手ら若手投手が台頭。打線も菊池涼介内野手、丸佳浩外野手を軸にここ数年の若手育成路線が開花しつつある。そうして開幕から首位戦線に躍り出ると9月まで巨人と優勝争いを演じ、地元では優勝がまさに現実味を帯びている状況なのだ。
優勝という悲願のためには前田の力が不可欠であり、しかも新システムでは焦って売り急ぐメリットは何もない。
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加えて今季はカープ女子のブーム等もあり、観客動員は190万4781人と悲願の200万人動員に迫る勢いを見せている。もし来年、優勝を実現できれば観客動員、グッズの売り上げなどは今季をも大きく上回ることになり、経済的にも今オフの前田放出に待ったがかかるのは当然の帰結だったのである。
ポスティングは夢の実現を助ける制度になるか。
今季は11勝9敗と2ケタ勝利は達成したが、勝負どころで力を発揮しきれないことも多かった。CS第1ステージで初戦に先発したものの、阪神・福留孝介外野手の一発に沈んで負け投手となり、チームのファイナル進出も達成できなかった。
本人にもそうした不完全燃焼の思いがあるのは確かで、球団の移籍不容認も最終的には受け入れざるをえないだろうと言われている。
昨年の日米交渉では、当初は入札金は最高額と2番目の額の中間で一度は妥結した。ところが日本側が選手会労組の顧問弁護士の“暴走”で態度を保留したことで、米側がこれを破棄。再交渉の結果、現行のシステムに落ち着いたという経緯があった。
ポスティングが選手の夢を実現する制度として導入された経緯を考えると、果たしてこれが夢の実現につながったのか。前田の残留は、改めてその問題を考える契機となるはずだ。